暇人の感想日記

映画、アニメ、本などの感想をつらつらと書くブログです。更新は不定期です。

結局、キャラ紹介「だけ」で終わってしまった:2017年秋アニメ①【キノの旅-the Beautiful World- the Animated Series】感想

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 長年ファンである本作。アニメ化を聞いたときは嬉しかったので、不安もありつつ楽しみにしていました。そして1話が終わって、心の底から安堵しました。素晴らしい出来だったからです。感想を貼っときますね。

 

inosuken.hatenablog.com

 

 「これなら任せられる。大丈夫だ。・・・そう思ってた時期が、私にもありました。回を重ねるごとにどんどん微妙な出来になっていき、終盤ではイライラしながら見るハメになりました。

 

  全話見て思ったのが、「全24話くらいあるTVアニメのセレクト放送、もしくは傑作選みたいだな」ということ。あれは、前やっていた作品の続篇が放送されるときとかに、「とりあえずこれ知っとけばこの作品は大丈夫」という基礎的な知識をつけるために、そういった基礎的な内容を含んだ話を全体の構成を無視して放送しています。本作は正しくこれです。故に、「1クール使った作品紹介」に止まってしまっています。これによって大きな弊害が生まれてしまいました。次から書いていきます。

 

 それは、『キノの旅』が持つ寓話的な要素が薄れてしまったことです。時雨沢先生によると、『キノの旅』の最大のモデルは『銀河鉄道999』だそうです*1。あれは鉄郎が様々な風習を持った星を旅するものです。 そしてそれに加え、『星の王子様』や、星新一作品の要素もあると思います。これらに共通していることは、基本的に各話の主人公はその星や国の人々であることだと思います。原作もその要素は継いでいて、少なくともキノの話は、基本キノは傍観者であり、主役は国民です。前作のアニメはここら辺を徹底して描いていました。

 

旧作の感想はこちら。

inosuken.hatenablog.com

 

 しかし、本作では、一転して、「キャラメイン」になっているのです。キャラクターが印象に残る話が選ばれていますし、そう演出もされていると思います。こうなった理由は明らかで、基礎知識をつけようとした結果だと思います。とりあえず全員出そう、ということですね。

 

 これによって、寓話的な要素は薄れました。代わりに印象に残るのはキャラクターです。しかも、出てきてある程度掘り下げられればいいのですが、曲がりなりにもそれができたのはシズ一行くらいで、後の2組、師匠組とフォト組は「出ただけ」で終わっています。ここで、話がとっ散らかっている印象を受けますし、余計に「上澄みをなぞった」感があります。

 

 さらにこの問題に拍車をかけたのが尺の問題。これによって、余計に問題が発生します。肝心の「キノの話」が少ないのです。全話見渡してみると、「キノの話」と言えるのは1,2,3,5,9~12話と、一見多いです。しかし、先に挙げた「傍観者キノ」の話はいくつあるかというと、個人的には1,3,5話だと思っています。9話はネタ回でしたし、10話はイレギュラーな話。これはもっと「傍観者キノ」の話をやらないと効いてこないと思います。11話は、まぁ、「キノ」の誕生の話ですからね・・・。12話は羊。何でこの話を最後にしたんだ。故に、1,3,5の3話です。しかも厳しめに見れば、3話はキノが色々なルールを破る話。多分フルートの紹介で出したかったのでしょうが、3話でやる話でもないような。だから実質2話です。2話しかないのです。少なすぎ。だから必然的にキャラの印象が強くなります。映画のシリーズ物は1作目がキャラや作品の紹介に終わるから本筋は浅くなるというジンクスがありますが、本作はまさにそれに陥っています。本当、アニメ化って、運ですね。

 

 しかもこれによって、最後の演出も微妙な感じになっているような。私は11話のあの演出は1話冒頭の補完になっていると思っていて、そこらへんは素晴らしいと思いました。でも、それは1話と11話だけで完結しているのです。間の「傍観者キノの話」が少なく、しかも他のキャラの話が内容的につながらないから、11話であのオチをやっても、「あぁ、なるほど」ぐらいにしか思えん。

 

 こうなったのは、構成のせいというか、先に挙げた尺のせいです。短いからこんな感じになったのだと思います。よく見ると、「この尺で紹介する」という1点においては、ベストな構成だと思います。つまり、尺のせいですね。何でもっと話数を増やせなかったのでしょうね。まぁ今のご時世、仕方がないにしても、電撃文庫の功労作品の1つなのは間違いないんだからもっと頑張ってもいいと思うんだけどなぁ。

 

 後は、作画も問題だと思っていて、素晴らしい回は本当に素晴らしいのですが、ひどいときはひどい省エネ作画でした。もっと頑張ってほしい・・・。

 

 ただ、いくつかの話は本当に素晴らしいです。1話は何度見ても良いし、5話も良い。こういうので良いんです。懸念の「優しい国」も悪くなかったです。そして何より、「大人の国」。凄かった。ずっと色褪せた世界だったのが、城壁を抜けたら色付く演出は素晴らしい。ここで、旧作とは違うアプローチで、同じ結論に辿り着いています。キノは、1話冒頭の通り、世界の美しさを知っていたのですね。しかも旧作最終話と対になるラストの台詞。これだけなら旧作超えてます。

 

 これで紹介は終わりました。つまり、次で、ようやくキャラの深掘り、「傍観者キノ」の話が見られます。次こそ、スタッフの方々には頑張っていただいて、理想的な『キノの旅』を作り上げていただきたいと思っています。円盤買いますから。

*1:キノの旅XIII‐the Beautiful World‐」p.247 あとがきより