暇人の感想日記

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2019年冬アニメ感想①【revisions リヴィジョンズ】

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 フジテレビが推し進めている「+Ultra」枠で制作されたTVアニメ。監督は『コードギアス 反逆のルルーシュ』『スクライド』等の谷口悟朗さん。私は谷口さんの作品は可能な限り追おうと思っているし、「+Ultra」枠というフジテレビが気合を入れている枠の作品なので視聴しました。

 

 視聴してみると、最近のアニメのトレンドと過去の名作の設定を上手く脱構築し、谷口監督流の「王道でありながら捻くれた作品」になっていました。

 

 本作は、まず渋谷の一部が未来に転送されるという驚愕の展開から始まります。これを見て真っ先に思い出すであろう作品は楳図かずお先生原作の名作「漂流教室」でしょう。また、「隔絶された空間で大勢の人が生きる」という展開は谷口監督のつながりで、『無限のリヴァイアス』を思い出させます。ただ、私としてはこの展開に別の意図を感じました。それは、異世界転生モノを谷口監督流に脱構築するという意図です。

 

 

 異世界転生モノとは、『Re;ゼロから始める異世界生活』や『ナイツ&マジック』、『転生したらスライムだった件』等に代表される、「現実世界にいた主人公が、何らかの方法(大体不慮の事故による死亡)で、異世界に転生し、その時に授かった能力と現実世界で得た知識を使って無双する」というもの。『リゼロ』等、一部例外もありますが、基本的にはこの内容です。基本的にこれらの作品は、「現実世界ではイケてない俺らでも、異世界ならワンチャン活躍できんじゃね?」という妄想から生み出されているのですが、これらの作品では、主人公は何故か異世界に転生し、そこで何故か重要な役割を果たします。まるで、そういう運命だったかのように。

 

 

 本作の主人公、大介(どことなく碇シンジ似)はこうした妄想を取り入れ、異世界転生主人公を批評的に描いたキャラクターだと思います。幼い日のミロとの約束を守るべく1人で「危機」に備えているのですが、周りからは変人扱いで、良いことなど全くない。そんな彼ですが、「運命」通りの危機(=渋谷転送)が訪れたことで自らの行動が間違いでないことが証明されました。設定だけ見れば、彼は完全なる異世界転生モノの主人公で、普通の異世界転生モノならば、ここで大介が超能力を発揮して無双を始めるのですが、本作ではそうはならない。1話だけならば大介は大いに活躍しますが、その後は、彼のアイデンティティを壊していく展開が続きます。「自分にだけ動かせる」と思っていたストリング・パペットは他のルゥやガイ、愛鈴や慶作にも動かせることが判明し、「護る」と誓った人々は救世主たる自分にぞんざいな扱いをする、「運命の人」であるはずの自分は自己中な行動をとがめられ、リーダーはガイになるなど、徹底して、「自分は運命の救世主だ」という思い込みを壊していきます。

 

 そんな彼がそれまでの行いを反省し、少しだけ成長するのが第7話なわけですが、その後、大介は単なる「バックアップ」でしかなかったことが判明し、慶作が死んだことで自らが信じてきた運命が完全に否定されます。

 

 そこからの復活劇が泣かせるわけです。彼は全てを失いましたが、失ったことで、もう一度自分自身と向き合い、再度「皆を護る」事を誓います。これは「運命」に従った結果ではなく、自らが選択した結果です。ここに、「皆を護る」事を決意した堂島大介というキャラクターが誕生したのです。このように、本作は大介という「主人公」が真の意味で「主人公」になる話なのだと思います。

 

revisions リヴィジョンズ 1 (ハヤカワ文庫JA)

revisions リヴィジョンズ 1 (ハヤカワ文庫JA)

 

 

 自らの運命を切り開いた大介ですが、これは本作全体に通底するテーマでもあると思います。一応の「敵」であるリヴィジョンズも、一応の「味方」であるアーヴも、手段は違えど、自らの「運命」を何とかしようとしていた組織でした。この2者に板挟みになるのが現代人なわけですが、彼らは右も左も分からない状況下で、とにかく自分たちに味方するアーヴと協力していきます。ここでリヴィジョンズと協力しようとする人物も出てきますが、最終的に双方のリーダー的人物が命を落としてしまい、味方だと思っていたアーヴも、自分たちを実験材料程度にしか思っていなかったことが判明します。ここで、現代の人々もまた、頼るべきものを失ったのです。

 

 しかし、そんな中で、「現代に帰る」事を目的に、自分たちで一致団結し、「自分たちの力で」道を切り開くことを決意します。ここに、「運命なんてあるわけないだろ。それは自分たちで切り開くものだ。アニメみたいに最初から都合よくいくわけないだろ」という谷口監督の捻くれた考えが伺えました。こんな考えをしたのは私だけかもしれませんが。

 

 「運命」というレールに従うのではなく、自分たちで道を切り開くことを軸に、大介というキャラを通して一種の「主人公論」までやってのけた本作。やっぱり谷口監督って、捻くれてんなぁ。

 

 

同じく谷口監督作品。

inosuken.hatenablog.com

 

同じく、「運命を切り開く」話。

inosuken.hatenablog.com