暇人の感想日記

映画、アニメ、本などの感想をつらつらと書くブログです。更新は不定期です。

【ファントム・オブ・パラダイス】感想

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88点

 

 ブライアン・デ・パルマ監督のロック・ミュージカル。方々でカルト的人気を誇る本作ですが、なるほど作品全体に「異様な」雰囲気を漂わせている怪作でした。

 

 本作は所謂「出来のいい映画」ではありません。物語はあるものの内容は滅茶苦茶だし、役者の演技も普通です。ですが、映像テクニックだけは突出して高いという歪さを持っています。そしてその歪さの中に、監督の「俺はこの映画がやりたいんだ」という強烈な熱意を感じます。

 

 本作はまず、主人公が「ルパン三世」のマモー似の悪徳プロデューサー・スワンにはめられ、曲をパクられてムショにぶち込まれる下りから始まります。そして、主人公は脱獄し、自身の曲をパクり、愛した女性さえも奪おうとする悪徳プロデューサーに復讐をします。

 

とまぁ、ここまでのストーリーは「オペラ座の怪人」が主な下敷きになっていることは明白です。そこに今度は「ファウスト」なども加えられていき、スワンが実は悪魔と契約していたと判明するなど、どんどんわけが分からなくなっていきます。今作はこの混沌とした話をさらにロック・ミュージカルでまとめているんですよ。もう混沌の極み。

 

このように混沌な映画ですが、テンポが非常に早いため、あまり気にせずサクサク見ていられます。しかも、脱獄の下りとか、ところどころギャグにしか見えないところもあったり、「サイコ」のパクリシーンがあったり、監督のやりたい放題です。

 

本作で突出しているのは、映像のテクニックだと思います。画面分割とか鏡を使った表現とか、それらを観ているだけで楽しかったですね。

 

ここまで、本作を歪だと書いてきましたが、それこそがデ・パルマ監督の実力を証明している気がします。何故なら、私自身「歪」で、「出来がいい映画ではない」と思いながら、最後まで見入ってしまったのですから。デ・パルマの実力は半端ではないと思います。

 

最後に、ロックというものについて考えてみたいと思います。ロックとは、一種の自己表現です。そこには演奏の上手い下手もあると思いますが、歌い手の伝えたい熱意があります。こう考えると、歪ながらも圧倒的なテクニックで監督の熱意を伝えた本作はロックだなぁと個人的に思います(揶揄じゃないですよ)。