暇人の感想日記

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「ロッキー」から「クリード」への真の意味での継承【クリード 炎の宿敵】感想

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85点

 

 

 『ロッキー』シリーズ通算8作目にして、『クリード』シリーズ2作目の本作。前作が予想を大きく超える大傑作だったこともあり、私の本作への期待値は「普通」でした。それは決して期待していないという意味ではなく、「前作を超えることは決してない」という自身への期待値を抑えた結果でした。しかも内容は『ロッキーⅣ 炎の友情』でアポロを殺したドラゴの息子とアドニスが戦うというもの。最初聞いたときは「もう来たのか」という気持ちと、「ちょっと安易なんじゃないのか」という気持ちが起こり、それがさらに期待値を抑制していました。

 

 しかし、実際に鑑賞してみると、その抑制していた期待値を超えてくる作品になっていました。本作は『ロッキーⅣ 炎の友情』の直接の続篇的な作品ですが、それだけに終わりらず、アドニスのさらなる成長とロッキーがこれまで抱えてきた後悔、そして『ロッキー』シリーズでは見えてこなかった側面から物語を捉え直す、という事を描き、最終的には、真の意味で『ロッキー』から『クリード』への継承が行われていた作品でした。

 

 

 『クリード チャンプを継ぐ男』は『ロッキー』を下敷きにしていました。前作の偉大な点は『ロッキー』を踏襲しつつ、ちゃんと現代版へとアップデートしていた点でした。翻って、本作の軸は『ロッキーⅣ』です。ストーリーも大筋は同じです。笑ったのは、トレーニングシーンが『ロッキーⅣ』ばりにド根性ものになっていた点ですね。しかし、本作はそれ以外のシリーズ作品も踏襲し、『ロッキー』が歩んできた足跡をそのまま一気に見せていきます。冒頭でアドニスがチャンピオンになるのは『ロッキーⅡ』ですし、チャンピオンになったアドニスがより強力な相手に脅かされるのは『ロッキーⅢ』を、「父親になる」ドラマとしては『ロッキーⅤ』、『ロッキー ザ・ファイナル』を彷彿とさせます。

 

 

 さらに本作は、これ以外にも、3種類の「父と子」の物語を挿入することで、『ロッキー』シリーズにおいて残ったしこりをきちんと回収しています。ここでいう「父と子」は言うまでもなくロッキー、アドニス、そしてドラゴです。ロッキーは自身が偉大過ぎるせいで息子が離れ、未だに向き合えていません。ドラゴは逆に、息子を復讐のためだけの育てています。そしてそんな2人と共に、「子供に向き合い、父親になろうとする」アドニスの姿が描かれます。そして「しこり」とは、『ロッキーⅣ』において、アポロを見殺しにしてしまったロッキーの後悔です。あの後ロッキーはドラゴを倒しましたが、アポロの後悔は今でも残っています。しかも、この結末によって、ドラゴは復讐の鬼となってしまっています。余談ですが、この構図は『ロッキーⅣ』に出たことで一躍スターになるも、アクション映画衰退後は低迷したドルフ・ラングレンのキャリアと被ります。

 

 これらのしこりは、ラストで見事に回収されます。それまでの積み上げの上手さもあり、非常に感動できるシーンとなっています。あの時ロッキーが投げられなかったタオルを、ドラゴが投げる。これはドラゴがあの時のロッキーを超えたという事だと思いますし、同時に復讐しか考えられなかった男が最後に息子への愛情を取り戻す意味も持っています。ラストで並んで走っている姿が感動をより高めます。

 

 親子として向き合ったドラゴと共に、ロッキーも息子と向き合います。それはスタローンの人生を知っていれば感動的な展開であり、同時に前作で触れられなかった部分に触れることでしこりを払拭したと思います。

 

 そしてアドニスも、アポロの墓に行き、新たに父親になる事を決意します。これを踏まえれば、試合後のスタローンの「お前の時代だ」の台詞は、この『クリード』シリーズを『ロッキー』シリーズの呪縛から完全に解放したように聞こえます。もし第3作が制作されるのならば、『ロッキー』シリーズのフォーマットをなぞらず、完全な『クリード』の物語を作ってもらいたいと思います。出来れば監督はライアン・クーグラーで。

 

 

前作の感想です。大傑作です。

inosuken.hatenablog.com

 

 

 ライアン・クーグラー、マイケルBジョーダンのコンビが生んだ傑作。

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