暇人の感想日記

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『イップ・マン 完結』公開直前!【イップ・マン】シリーズ4作の感想

 5月公開(されるかどうか大分怪しくなってきましたが)予定のドニー・イェン主演の完結作の予習として鑑賞。公開を信じて、シリーズ4作の感想を簡単に書きたいと思います。

 

 

『イップ・マン 序章』

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78点

 

 とにかく武術の面でも役者としてもドニー・インの独壇場です。高潔なイップマンの姿には憧れるし、華麗なアクションには惚れ惚れします。そのアクションは非常にスタイリッシュ。繰り出される詠春拳ドニー・イェンの身体能力もあって速く、華麗。本当に達人が戦っているようにしか見えない。

 

 第2次大戦中が舞台ということがあり、必然的に敵は日本軍。しかし観てみるとそこまで描写が露骨ではなく、嫌な部分は佐藤大佐役の渋谷天馬さんが一手に引き受けて好演されていて(ビジュアルも『ティファニーで朝食を』みたいな「典型的な偏った日本人像」だし)、池内博之さんが演じる役は非道な点もあれど、「武人」として中々筋が通った人物として描かれていました。おそらくかなり配慮してくれていると思う。しかし、作中の描写には同じ日本人として何だか申し訳ない気持ちになったのも事実。

 

 ストーリーは無駄な点もあれど、おそらく「中国人にとって理想的な人物」であるイップマンが自分たちを虐げていた日本軍に武術で打ち克ち、中国人の誇りを護るという、つまりは「虐げられていた者が一矢報いる」話で、シンプルで観やすい。敵が日本軍でなければもっと爽快感を味わえたかと思います。それは仕方がないにせよ。

 

 

『イップ・マン 葉問』

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87点


 本作の大筋はぶっちゃけ敵がイギリスになっただけで1作目『序章』と全く同じ。虐げられていた者が一矢報いる話。他の作品に例えれば『ロッキーⅣ 炎の友情』そのまんま。それはすなわちベタながら燃える作品だということです。

 

 本作を観れば、『序章』から続くこのシリーズの違う側面が見えてきます。それは本シリーズが1840年のアヘン戦争以降、世界中から食い物にされてきた中国が『燃えよドラゴン』で一矢報いるまでの話だということです。本作の「敵」はイギリス。イギリスは本作の舞台である香港を統治していました。そんな奴らにイップマンが武術で勝つ。中国の悲惨な歴史を見れば、これが中国にとっての誇りを護る戦いとして一貫していることが分かります。つまり、この流れで観れば、1作目の敵が日本だったのは、何もこの映画が「反日」だからではなく、必然的にそうなってしまっただけなのです。

 

 そしてもう1つ気になったのが敵側の描写。本作のイギリス側の描写は、前作の日本軍のそれと比べれば、かなり露骨に「悪」です。本作を観ることで、前作がかなり配慮してくれていることが分かりました。おそらく日本とは関係悪化が懸念されるからだろうなぁ。

 

 最後に、ドニー・イェンのアクションが素晴らしいのは当然なのですが、前作と比べて戦いにバリエーションが増えていると感じました。特に素晴らしかったのがサモ・ハン・キンポーとの一騎打ち。キンポー自身が歴戦の役者なので、迫力と貫禄が段違いでした。後はボクシングとの異種格闘技戦か。

 

 

『イップ・マン 継承』

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85点

 

 全2作とは結構趣が異なる。「虐げられていた者たちが一矢報いる」的な内容ではなく、どちらかと言えばイップマンの周囲の物語で、話の規模は小さい。それでも際立つのは本作のアクションシーンのバリエーションの豊富さ。マイク・タイソンとの3分間勝負、エレベーターでのムエタイ使いとの戦い、そしてラストの詠春拳後継者勝負。どれもが創意工夫に富み、カメラワークとか素晴らしい。

 

 そしてイップマンの物語として、一区切りする話でもある。これまで支えてくれた奥さんとの別れ、そして、詠春拳の使い手として成長する物語。タイトルの「継承」は邦題なのだけれど、劇中のイップマンの「子ども達は今の大人を見ている。我々は正しい行いをしなければ(うろ覚え)」という台詞がそうなのかなと。つまり、イップマンの「理想の中国人」の意志の継承。さらに、マックス・チャン演じるティンチへの「継承」でもあるのかもしれないと思いました。

 

 

『イップ・マン外伝 マスターZ』

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82点

 

詠春拳、チョン・ティンチ」

 

 本作の主人公は前作で葉門と詠春拳の正統な伝承者をかけて戦った男、チョン・ティンチ。彼が失意のうちから武術の誇りに目覚め、再び立ち上がるまでを描きます。

 

 本作はとにかく面子の豪華さに圧倒されます。マックス・チャンの脇にはデイヴ・バウディスタ、ミシェル・ヨー、そして特別出演でトニー・ジャーが出演。現代、そしてレジェンドのアクションスターが揃い踏みです。彼らの多彩なアクションを観るだけで本作はもとがとれます。バウディスタはシリーズ恒例の異種格闘技戦の面白さ、ミシェル・ヨーはもちろんソード・アクション、そしてトニー・ジャーはスピード感ある格闘。場所も繁華街の看板を使ったものとか工夫が効いているものもあります。そしてそれらを映すカメラワークがこれまたいいのです。ユエン・ウーピンの実力が分かります。そしてシリーズ通して観ると、アクション演出の進化もよく分かります。

 

 そしてティンチの覚醒の下りも非常に胸アツ。自身の成り上がりのための道具ではなく、誰かを護るため、正しきことをするためにその拳を振るう。それに気づいた彼の姿はとてもカッコいいのです。そして彼が息子持ちであることも効いていて、この覚醒が息子にとっての「ヒーロー」になるという意味にもなるのですのも燃えるポイント。この点はティンチのキャラ的には素晴らしい見せ場だと思います。

 

 以上、『イップ・マン』シリーズの感想でした。完結編、楽しみにしてますよ!