94点
「21世紀最も怖いホラー」と大評判の本作。昨年あたりから「ホラーで怖い思いをしたい」と思っていた私としては見逃すわけにはいきません。というわけで、鑑賞してきました。
鑑賞してみると、噂に違わずメチャクチャ怖く、さらに「厭な」ホラー映画でした。本作を観始めて困惑するのが、「ジャンルがどんどん変わる」点。ホラーかと思ったら家庭崩壊映画になったり、『オーメン』かと思ったら『エクソシスト』のようになります。しかし、最終的にどれとも違う点に着地してしまいます。破綻なくこれらを纏めているのは本当にすげぇ。
本作の「怖い」部分ですが、私が近年観てきたホラー映画とは一線を画しています。怖がらせ方がメチャクチャ上手いのです。例えば、最近よくある「音で怖がらせる」演出。だいたいの作品は「来るぞ、来るぞ」と観客の緊張感を煽り、ビックリさせます。しかし、本作は違います。ビックリ演出でも、緊張させるのではなく、一瞬我々を「油断」させ、その隙をついてビックリさせるのです。なので、本当に心臓に悪い。
しかも、本作はこれだけの作品ではありません。むしろビックリ要素は少なめ。真に恐ろしいのは他にあります。例えば、暗闇を見ていたら「何か」が見えてしまったときの背筋がゾクゾクする怖さ、こちらが意図しないタイミングで出てくる「幽霊」、「コッ」と喉を鳴らす音等、大袈裟な演出ではなく、じわじわと我々を精神的に追い込んでいきます。しかもそれらを観客の視点や心構えを完全にコントロールした上でやるのです。本作が「怖い」のも、これが完璧にできているからだと思います。序盤のアレだって我々も「見る」ように仕向けてるし、全体的なタイミングも我々の心構えの一歩先を行っています。こんなのが続くので、終盤では心臓がバクバク鳴っていて、「次何か来たら俺ショック死するかも」と考えて観ていました。
このように、「怖い」映画であることは間違いないのですが、それだけに飽き足らず、本作は実に「厭な」映画でもあります。平凡な家族がとある事件に直面するも、誰もそれに対して責任を取りたがらず、かといって逃げたくても「家族だから」逃げられずにどんどん追い詰められ、その結果として最悪の事態を招いてしまうのです。ここの部分だけ観てみると、本作はよくある「家庭崩壊映画」としても観れます。
しかし同時に、ある意味では、本作は家族の再生の映画とも言えます。しかし、その再生の仕方が最悪なのですが。家庭乗っ取りですからね。本作の最も厭な、そして、怖い点は、「自分の運命を他人に決められる」点。登場人物たちは運命に抗っているつもりでも、全てが黒幕の掌の上なのです。これは冒頭から示されています。ミニチュアから始まる導入です。あれで「すべて作りものですよ」と強調され、劇中でも入れ子的な演出が多用されます。つまり、あの家族自体が我々がシルバニアファミリーを遊ぶがごとく、大きな力に操られていると示されているのです。
平凡な家庭が、大きな力に操られ、崩壊し、最終的に乗っ取られるからこそ、本作は「怖く」「厭な」映画なのです。
今年公開されたホラー映画。設定は面白かったのですが、それだけな感じがしました。
本作と完全に真逆な作品。家族がもう一度まとまる。