暇人の感想日記

映画、アニメ、本などの感想をつらつらと書くブログです。更新は不定期です。

【ブルータリスト】感想

78点

 今年のオスカーでも大本命と目されていた映画。ブラディ・コーベットの映画を見るのは初めてだったが、前評判の高さから楽しみにしていた。1人の建築家の半生を描いた大河ドラマであり、そのスケールに恥じない上映時間を誇る。しかしその実、語り口が独特の映画だった。

 才能あふれる建築家ラースロー・トートはホロコーストを生き延びることに成功する。しかしその最中、家族と引き離されてしまう。家族とともに生きるためにアメリカに移住することにしたラースローは、実業家のハリソンと出会う。才能を気に入られたラースローは、家族のアメリカへの早期移住と引き換えに、ハリソンからとある施設の建築を依頼される。これを了承し、作業に取り掛かるラースローだったが、彼には数多くの障壁画立ちはだかる・・・。

 本作はアメリカに移住したユダヤ人の半生の物語である。しかしそれは決して輝かしいものではなく、自らのアイデンティティや資本主義と芸術との葛藤といった苦難の物語であり、冒頭で、暗闇から出てきたラースローが見た自由の女神が歪な角度で映されている点がそれを象徴している。自らの芸術性のために、敢えて資本主義や差別主義的な人間とも折り合いをつけるという矛盾。その苦難の果てに、それらを呑み込んで自身の礎を作り上げたという、歪なアメリカン・ドリームの物語なのだと思う。

 大河ドラマに恥じず、本作の上映時間はインターミッション含め215分である。しかし、これだけの上映時間を有しながら、本作は非常に冗長な語り口を持ち、何なら「語っていない」箇所も多い。あるシークエンスを長回しを多用して過程含めじっくり見せたかと思いきや、肝心の建築の下りはあっさり済またり、姪が話せるようになった理由は特に明示されない。そこのドラマとかは特にやらない。そして終いにはラストの台詞(「過程ではなくて結果が大事」)である。正直ナメとんのかと言いたくなったのだが、パンフレットを読むと、監督のブラディ・コーベットは歴史を創作することが多いらしく、本作もそれに当てはまっている。歴史とは過程も大事だが、後世の人間からすれば、結果しかない。この挑発的な台詞は、「歴史という結果」という意味を含んでいたのかも、と考えた。

 また、本作は「映画」であることに非常に自覚的な映画だと思う。まず驚きなのが、本作が70mmフィルムのビスタビジョンで撮られているという点である。これで解像度の高い映像美を手に入れている。そして、本作は往年のハリウッド大作のように「序章」→「第1部」→「インターミッション」→「第2部」→「エピローグ」という構成になっている。本作自体が建築を題材にした映画であることから考えて、描こうとしている物語にふさわしい形式にしていると思った。ちなみに、入場者プレゼントではラースローの個展のリーフレットが配布されるのも粋な計らいだなと。

 傑作とまではいわないけど、「外観」は非常に良く取り繕ってある映画だと思った。そしてこれは「建築」という題材とリンクしているので、意図的なのではないかと思う。この点は面白かったけど、ドラマはあまり乗れなかった。