暇人の感想日記

映画、アニメ、本などの感想をつらつらと書くブログです。更新は不定期です。

2018年春アニメ感想⑦【シュタインズ・ゲート ゼロ】 ※ネタバレあり

f:id:inosuken:20181007132100j:plain

 

 

 

 前作『STEINS;GATE(以降、無印)』は、驚異的な完成度を誇るアニメでした。前半のキャラクター紹介を兼ねた周到な伏線張り、そしてその日常が崩壊し、物語が一気にドライブしだす中盤。そしてそこから続く、容赦なく残酷な結末を突きつけてくる世界への抗いと、その残酷な結末を回避するために選んだ苦渋の決断の数々。しかし、積み上げたそれらを全て背負い、辿り着いたラストの大逆転の展開。前作には、エンタメの手本のようなどんでん返し、苦悩、鮮やかすぎる伏線回収、そしてそこから来るカタルシスが詰まっていた傑作でした。

 

 本作は、そんな完璧に終わった作品の続篇となります。最初に聞いたときにはビックリしました。出来るわけないと。確かに、素晴らしい完成度を以て終わった作品にも、続篇は作られます。そしてその場合には大体において新しい敵を用意するとか、事件を作る必要があります。しかしそれは終わった物語の中にまだ新しい要素を追加する隙がある場合です。ですが、本作の場合は話が違います。無印はこの作品の中で事件が完璧に終わっているんですよね。しかもそれでまた事件を起こせば、矛盾が起こり、前作そのものを否定することに繋がります。だから、続篇企画そのものが無理な話なのです。

 

 そんな難題に対し、スタッフが出した答えは、「まゆり救済ルートを作る」でした。思えば、まゆりは無印では言うなれば負けヒロインで、おそらく紅莉栖とオカリンへは複雑な気持ちはあったのでしょうが、そこまで掘り下げられずに終わった感がありました。本作では、無印では紅莉栖のために復活した鳳凰院凶真が、本作ではまゆりのために復活するまでを描きます。そして同時に、無印とはまた違った「想いの背負い方」をしていると思いました。私は原作ゲームをプレイしていないので、本作は、「如何にオカリンが鳳凰院凶真として復活するか」を期待して見ていました。なので、この展開が来たときは「そう来たか」と思いましたね。ただ、同時に「無理やり作った感」がする作品でもありました。

 

 本作は、無印の終盤でまゆりにビンタされなかった世界線を描きます。前半は無印と同じく、伏線張りと日常描写が積み重ねられます。しかし、オカリンは鳳凰院凶真を封印しているため、無印とは違い、彼が苦しんでいる様が描かれ、雰囲気は暗めです。また、無印はこの日常の中にも「何か」が進行しているという緊張感があったのですが、本作にはそれもやや希薄な印象です。なので、前半はやや退屈な気がしました。

 

 そして無印と同じく、中盤で物語が大きく動くのですが、これが無印と比べると結構穴がある気がしたり、後出しな展開もある気がします。レスキネン教授の下りとか、かがりの下りとか、後で矛盾が出そうな気もします。ただ、無印の補完的な話も多く、そこはなるほどと思わせられます。

 

 そんなモヤモヤした気持ちを抱えたまま視聴していましたが、最終回でやられました。無印のまゆりのビンタ、そして未来のオカリンからのメッセージ。それらに込められた皆の思いを(たとえ後付けであっても)知ることで、オカリンは皆と共にシュタインズ・ゲート世界線を勝ち取ったのです。これは皆の想いを1人で背負ったオカリンと比べると、全く逆です。これは無印とは別種のカタルシスを生みます。そしてこれにより、まゆりがオカリンにとってどれほど大きな存在なのかも示されます。そんな中迎えたラストシーン。ずっと待っていた2人の前に現れる鳳凰院凶真。彼の復活とまゆりルート完成をこう出してくるとは。この最終回だけでも、ここまで見てよかったと思えました。

 

 ただ、やっぱりどこまで行っても「前作の補完」の域を出ていない作品で、これは作品の性質上仕方がないのですが、全体的に「無理やりひねり出した感」は否めない作品でした。でも、それでもここまで作れば立派な作品だと思います。何だかんだ楽しんで見れましたし。