暇人の感想日記

映画、アニメ、本などの感想をつらつらと書くブログです。更新は不定期です。

2017夏アニメ⑤【プリンセス・プリンシパル】感想

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 サンヘルツ・アクタス共同制作、橘正紀監督によるオリジナル・アニメ。最初にこのアニメに興味を持ったのは、キャラクター原案を黒星紅白が務めているためでした。それだけでも個人的には見ておく理由にはなるのですが、それ以外にもシリーズ構成が大河内一桜、監督が「ばらかもん」「東京マグニチュード8.0」の橘さん、という豪華スタッフなので、個人的には今期「メイドインアビス」「ザ・リフレクション」と並んで楽しみにしていた作品でした。

 結果、期待通りの素晴らしい作品でした。話は1話完結ですが、各回ともに伏線の張り方や、二転三転するストーリー、そして話を観るごとに深まっていくキャラクターへの理解など、完成度がとても高い話が並んでいました。そしてそれらを繋ぐ全体の構成も見事だと思います。最終話は、いろいろ言われていますけど、私はあれはベストだったと思います。無理やりまとめても雑になるだけだし、あれによって、「アンジェとプリンセスの物語」として一応の区切りはついたと思います。

 話は1話完結です。しかし、エピソードは時系列をシャッフルしているという特殊な形態をとっています。例えば、放送1話に時系列でいえば13話を入れたり、2話目で時系列上の1話を入れたりしています。これがものすごくよく機能しているなと思います。というのも、これによって、キャラクターをより深く理解できると思うからです。

 例えば、アンジェとプリンセスの関係ですが、まず1話で型通りの関係を見せておいて、2話目で「そういう関係だったのか」とひっくり返しています。こうすることで、主要キャラクターの行動原理が話を経るごとにだんだん裏付けされていくんですね。

 また、キャラの内面がよくわかるようになる要素として、各話そのものが基本的にキャラクターと合わせ鏡になっていることが挙げられます。このことは橘監督もインタビューで述べられています。ここから、キャラが抱えている苦悩、過去が浮かび上がってきて、キャラに深みを与えていると思いました。

 そしてそれが頂点に達したと思うのが、8話です。これまでモヤモヤしていた2人の関係が一気に解消されて、同時にプリンセスの、アンジェの覚悟の理由が明らかになる下りは本当に素晴らしかった・・・。

 本作の重要な要素として、「壁」が挙げられます。それは東西を分けたあの壁です。あの壁は間違いなく両国を分けました。しかし、それ以上に人々を分けてしまったとも思います。その一例がアンジェとプリンセスであり、劇中に出てくる人々であるのだと思います。革命が起きなければあの2人は今とは違う形で楽しくやってたかと思うとやるせない。また、それ以外にも差別や貧困といった当時のイギリスでも起こっていそうな内容もありましたね。洗濯工場の話とか、ドロシーの父親の話とかがそうだと思います。

 最後に、とても重要な要素として、「嘘」が挙げられます。これは何重にも意味を持っていますね。アンジェをはじめ、キャラは皆何かしらの嘘をついています。それがストーリー上ミスリードになっていることもあったし、「嘘をつく理由」を考えることで、その人物が背負っているものを表現していたこともあったと思います。

 他にも殺陣とかかなり頑張ってたとか、スチームパンク的なところも面白かったとか、良いところがたくさんあるアニメでした。

 今作は、1つの歴史上の事件によって引き裂かれた少女たちの戦いを描いた、とても面白い作品でした。キャラものとしても良いので、2期があればぜひみたいです。余裕あれば円盤買いたい・・・。