暇人の感想日記

映画、アニメ、本などの感想をつらつらと書くブログです。更新は不定期です。

2018年夏アニメ感想⑪【BANANA FISH】

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 日本の漫画史に残る名作のアニメ化。昨今相次いで起こっている、「過去の名作のリメイク、アニメ化」の1つです。原作が伝説的な存在なので、アニメ化にはかなり高いハードルがあると思います。なので、企画したスタッフの勇気には賛辞を贈りたいです。ただ、この手のアニメ化はあまり上手くいかないときもあります。原作が完結済みなため少ない尺の中で無理やり完結させようとして作品の魅力を削いでしまっていたり、(こういう言い方は何なのですが)参加した方の実力的に上手くいっていなかったり、そもそも内容が古くなっていたり・・・。こういったことを考えて、上手く解決していかないと、アニメ化は成功しないと思います(何様だ)。

 

 ただ、この点においては、私はそこまで心配はしていませんでした。というのも、制作会社がMAPPAだから。この会社は劇場アニメでは『この世界の片隅に』TVアニメでは『ユーリ!!!on ICE』等、良作を多々制作している会社だからです。まぁ確かに、『うしおととら』とかもありましたが、あれはあれで何とかまとめていたと思います。しかも公開されたPVもいい感じだし、心配な点は全19巻もあるあの作品を、どう2クールにまとめるか、そして、時代を現代に移したことに違和感はないか、でした。

 

 

 感想を書く前のこの段階で、私と『BANANA FISH』について書きたいと思います。私にとって原作は、「存在は知っていたけど読んだことはない」枠でした。なので、このアニメ化を機に全巻読んでみた次第です。

 

 原作は確かにめちゃくちゃ面白かったです。バナナフィッシュという謎の薬物を追うという話を軸にし、コルシカ・マフィアとストリート・キッズの一大抗争、そして国家の陰謀を描くという少女漫画からは考えられないハードボイルドなストーリー、そしてアッシュや英二を始めとした魅力的なキャラクターなど、見るべき点はとても多い。ただ、やはり少女漫画らしく、キャラの関係性は非常にBLっぽいというか、ホモソーシャルな関係が描かれていますし、何より本作の話の軸はアッシュと英二の関係性ですからね。でもそれが、最終的にアッシュというこの世の地獄から抜け出せない男の魂の救済の物語になっている点が凄く良くて、何だかんだで最後のページで泣いてしまいました。

 

 

 こんな私ですが、TVアニメは大変楽しんで見ることができました。原作を最近一気に読んだ身としては、原作の内容をちゃんとまとめてあると思っていて、私の1つ目の不安、「まとめきれるのか」がちゃんと払拭されている作品でした。確かに、時代が現代になり、スマホがあることで、「スマホで調べればいいんじゃね?」とか思ったりしましたが、些細な点かなと思います。この意味では、本作はかなり無難にアニメ化されている作品だと思います。

 

 過酷な人生を歩んできたアッシュ。そんな彼だからこそ、自分に優しくしてくれる英二を信頼し、身を預け、全力で彼を護ります。だから、本作においては、英二はプリンセスなんですね。男同士でこの関係を描くってのもやっぱり少女漫画なのかなぁと。ただ、吉田秋生先生は「吉祥天女」を書かれた方ですからね。やはり「プリンセスな女性」は書こうとしないのでしょうか。どうあっても抜け出せない闇から、争いに次ぐ争いによって、ようやく抜け出したアッシュ。彼の魂が救済されたあのラストを見て、やっぱり私は泣いてしまいましたよ。