暇人の感想日記

映画、アニメ、本などの感想をつらつらと書くブログです。更新は不定期です。

【スター・ウォーズ/最後のジェダイ】感想 ※ネタバレあり

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75点

 

 遂に観ました。世間では賛否がパックリと割れている本作。思い入れが強い方が多いシリーズですし、本作でやってることを考えれば当然ですね。むしろ前作で上手くやったことの方が異例だったのだと思います。ちなみに、図らずも2017年最後に観た作品となりました。

 私の『スター・ウォーズ』シリーズに対する距離を述べておくと、「にわか」ですね。一応、EPⅠ~Ⅶ、そして『ローグワン』は観ていますが、それだけです。ちなみに、平成生まれなもので、初めて映画館で見たのは『フォースの覚醒』でした。なので、特別このシリーズに思い入れがあるわけではなく、一歩引いた視線で観てます。

 また、シリーズで何が一番好きかと聞かれれば、『フォースの覚醒』と答えるでしょう。観た当時はこの作品に疑問を抱きましたけど。というのは、EPⅥの次の話なのに、EPⅣみたいなことをやってるからです。「もう一度ここから語りなおす」という意味があるとはいえ、心にモヤモヤとしたものが残りました。でも歴代で一番面白かったと感じましたね。だって、C3POがほぼ出てないのに観れましたし。

 このような思いを抱き、年末にIMAXで鑑賞してきました。ここから感想です。ここからは盛大にネタバレしていきます。

 

 物語は前作のラストから始まります。レジスタンスはファースト・オーダーとの大戦闘シーンから。レイはルークと出会い、ライトセーバーを渡すところからです。しかし、ルークは即効でライトセーバーを捨てます。ここから全て示唆されるとおり、本作は「伝説を壊し、自分たちの世代の物語にする話」でした。確かに、本作では過去の「伝説」が次々と否定されていきます。ハン・ソロは前作で死亡(?)しましたし、レイアは序盤の後しばらく退場、ルークは「希望」として期待されていたけど、最終的には「あなたは希望じゃない」と一蹴されます。

 また、「ジェダイ」についてもヨーダ(何とEPⅠ,Ⅴ,Ⅵと同じくパペット)が直々に出てきて、「古い書物はもう必要ない」と、ルークが大切にしていた書物を焼き払います。ここまででもとんでもないですが、「ジェダイは多くの人間を殺した」とか、過去のものに対して相対的な視点まで持ってきています。これでこれまでの勧善懲悪が崩れます。

 ここまで「過去の伝説」を否定して、次は誰が銀河の平和を担うのか。それは、「名も無き普通の人々」です。本作でレイの両親が明かされますが、それは我々が期待していたものではなく、拍子抜けな答えです。また、フィンはⅠ~Ⅵでは「その他」の代表格、ストーム・トルーパーですし、ダメロンもただの1パイロットです。ですが、それが『スター・ウォーズ』シリーズの揺り戻しになってるのかなぁと思います。というのも、ルークって田舎の惑星に住んでいた一青年に過ぎなかったわけです。それがEPⅤで「実はダース・ベーダーが父でした」となって、一気に血統主義となってしまいました。そこを本作では「名も無き人々の話」に戻しているのかなぁと。ここまで考えると、この点で、本作は『帝国の逆襲』と真逆の構造になっていると思います。

 そしてこれは、同時に「あなた達のスター・ウォーズだ」という宣言ともとれます。レイたちは、前作で我々のようにルーク、ハン・ソロ、レイアといった「伝説」に憧れていました。そんな彼女たちは「名も無き人々」であり、「銀河を救う存在」なのですから。

 そのような彼らに対するのは、ダース・ベイダ-の孫であり、ハン・ソロとレイアの息子、という週刊少年ジャンプなら主人公が間違い無しのカイロ・レン。ただ、彼も血統主義の只中にいて、コンプレックスの塊です。しかし、彼も遂にそれを打破し、「伝説」と決別します。そしてレイとは違った形で、自らの目的である銀河を治めようとします。

 本作は全体的に彼(後はルーク)の映画でしたね。演じるアダム・ドライバーが素晴らしいです。『フォースの覚醒』の頃とは見違えるくらいのオーラを纏っていました。終盤の大立ち回りも素晴らしかったですし。一昔前の時代劇を思い出し、ちょっと感動しましたよ。と思ったら、監督は『三匹の侍』、『斬る』などの時代劇を参考にしたそう。なるほど。

 ルークも色々言われているそうですが、とても良かったです。老練な感じと若々しい感じが出ていて。

 ここまで見せられた後のラストがとても印象的でした。レイアを差し置いて、ダメロンに着いて行く彼ら。まさに「新しい時代の始まり」です。

 そして同時に、本作は1つの時代の終わりでもあります。「スカイウォーカー物語の終焉」です。ラスト、ルークが夕陽を観ながら霊体になるのは、『新たなる希望』から彼がたどった人生を考えるととて感慨深くなり、ちょっと感動しました。そして、また新たな「ルーク・スカイウォーカー」が誕生する瞬間にもちょっと涙。あの子が新3部作の主人公なのかな。

 このように、「1つの時代の終わり、そして新しい時代の始まり」としてはとても面白いです。ただ、全体的に粗がありすぎな気もします。中盤の「コード破りの達人探し」が完全に要らなかったとか、ダメロンが本当に「ダメ」ロンだったとか、ホルドはもうちょっと説明をすべきだろとか、チェイスシーン(?)に緊張感がゼロだったとか、キャプテン・ファズマが無能すぎだったとか、展開が全体的に「取ってつけた感」があるとかです。

 しかも、内容も前作の伏線の整理に留まっている気がします。まぁあれだけの風呂敷を良くもまぁあそこまでまとめたなとは思うのですけど。

 これはライアン・ジョンソンが「キャラを重視して演出した」結果かと思います。彼はパンフレットでも「大事なのはキャラだ」と言ってますし。

 さて、このように、私の考えでは本作は「過去の伝説を終わらせ、新しい時代を作る」話でした。それは上手くいっていると思います。見せ場もありますし、それらは総じて上がります。ですが、それらを繋ぐシーンが上手くないんですね。

 しかし、私は本作にディズニー側の思惑を感じ取ってしまいました。つまり、「これから、スター・ウォーズガンガン作るんで」ということです。

 本作で『スター・ウォーズ』シリーズは「普通の人々」の話になりました。それは良いことだと思うのですけど、同時にディズニーがいくらでも作品を作れるようになりました。こう考えると、『ローグワン』ですら、ディズニーのこのための「実験」だったのではないかと思えてきます。私は、今の3部作が「これからスター・ウォーズを作り続けるための整理」に終わってしまうのではないか、と心配になりました。そんなことはないか。次作、待ってます。