暇人の感想日記

映画、アニメ、本などの感想をつらつらと書くブログです。更新は不定期です。

【キングスマン】感想:不謹慎な「007」

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85点

 

 「マナーが人間を作る」劇中の台詞です。しかし、本作は「マナー」なんて知ったことか、みたいな雰囲気に満ち、虐殺は起こるはゲロ吐くは挙句の果てには脳みそ大爆発とか、痛快で、しかしとても不謹慎な作品でした。

 まず目を引くのが荒唐無稽のアクションです。ダニエル・グレイグ版「007」みたいなリアル路線ではなく、昔の「007」みたいなアクションです。劇中の台詞でも言及してましたし、序盤で露骨なそっくりさんが出てきましたね。そして彼は瞬殺されます。

 また、中盤の大殺戮シーンが印象的ですが、とにかく客観的に見れば悲惨な暴力描写を面白可笑しく描いています。つまり不謹慎なんです。これは批判の対象になったそうです。そりゃそうだ。でも、殺されるのは差別主義者どもなので、「いくらかは」中和されていて、痛快さが増していると思います。

 本作では、先に書いた序盤のやりとりと、この「不謹慎さ」が本作のテーマともつながっている気がします。本作のテーマは所謂「継承」なのかなと。しかもそれを昔のものを現代的にする、という形で成されています。

 そしてそれは作中ではマイ・フェア・レディに例えられています。あの作品は「マナーとか外見が問題なのではなく、その人間性が大事なんだ」みたいな話だったと思います。本作は外見所は昔の「007」みたいな作品ですが、中身のアクションは不謹慎さ100%です。そして、ザ・英国紳士なコリン・ファースから街の不良少年へ継承されます。それは外見上の「マナー」ではなく、本質的なものです。ラストが象徴的でしたね。

 役者では悪役のサミュエル・L・ジャクソンが最高でしたね。「血を観るのが苦手」なIT長者で、間違ったエコロジストみたいな役。どこか軽くて憎めない奴でした。憎む、という点でいえば、そこかしこに出てくる「上流階級」連中です。こいつらも最後には脳みそ大爆発で死ぬので何かスッキリします。そう、本作は不謹慎なだけで勧善懲悪ものなんです。

 ただ、ストーリーには難ありだと思っています。キングスマン入門試験も何だかヌルいし、「キングスマン」になる下りも微妙。でも、いいと思います。本作は昔ながらの「007」シリーズ現代版なんです。あのシリーズに「あそこがこれこれこうだからおかしい」とかいう人いますか?私は何も考えないで観ちゃうので、本作は楽しめましたね。