77点
数学に関して天才的な頭脳を有する女の子と、父親になりきれない男の話。タイトルは「gifted」つまり、「与えられた才能」です。直接的には、これは女の子の頭脳のことです。しかし、同時にキャッチコピーの通り、「愛する」才能も示していると思いました。
本作には2人の「親になりきれない大人」が出てきます。1人はもちろん、クリス・エヴァンス演じるフランク。もう1人はリンゼイ・ダンカン演じるイブリンです。
まずフランクですが、彼は、姉の遺言通り、メアリーを「普通に育てたい」と考えています。だからメアリーを普通の学校に通わせていますし、イブリンからも遠ざけています。しかし、彼はとある事情から自分にそこまで自信を持っておらず、メアリーに関しても姉の遺言に従っているだけです。だから何かというと遺言の話を持ち出します。
次にイブリンですが、彼女はフランクとは真逆で、メアリーに「天才」として、ギフテッド教育を受けさせようとします。もちろんそれは彼女なりにメアリーの幸せを考えてのことです。だから劇中では「悪」としての描写は全くありません。ですが、劇中の話を聞いていると、どうもそれは非人間的なものに聞こえてきます。また、彼女の過去が示唆されるシーンがあるのですが、どうも過去に挫折したことがあるようで、その埋め合わせも(無意識的とはいえ)兼ねている気がします。
この2人が対照的に映される事で、メアリーにとって「幸せ」はどっちなのか、と我々は考えるわけですね。
そして、本作を語るうえで欠かせないのが、「不在の中心」とも言うべきフランクの姉・ダイアンです。彼女は写真でしか出ませんが、結局、話は「彼女はどう思っていたのか」が中心になっていきます。客観的な状況は徐々に語られていって、それを知るたびにメアリーの現在の状況と似通っていることが分かります。そして、双方が「もう2度とあんなことは起こさない」と別のベクトルで考えているわけです。つまり、あの2人はある意味で「ダイアンのやり直し」をしようとしたのかもしれません。
そしてこの「ダイアンの気持ち」はラストで明らかになります。そこに書いてあった文字を見て、イブリンは気付いたのかなと。「ただ愛してやればよかったんだ」ってことに。ダイアンは彼女が思っている以上に数学が好きだったんだから。
そして、フランクもそこに気付きます。だからこそ、ラストはお互いに納得できる形に落ち着き、真の意味での「家族」になれたのかなと思います。
これらの内容を説得力のあるものにしたのは、やっぱり子役のマッケナ・グレイスの力が非常に大きいと思います。もはや貫禄は大女優のそれだと思いました。順調に彼女は役者として「ギフテッド」なのでしょうね。
このように、マーク・ウェブが「原点回帰」を目指して作った本作は、その通り、非常に規模の小さい、ありふれた話になりました。だからこそ、私は素直に感動できたのだろうなぁ。いい話でした。