暇人の感想日記

映画、アニメ、本などの感想をつらつらと書くブログです。更新は不定期です。

【トワイライト・ウォリアーズ 決戦!九龍城砦】感想

90点

 予告を見て、「なんて面白そうな映画なんだ!」と思ったのと、アカデミー賞香港代表らしいので鑑賞。そしたら想像の遥か上をいく面白い映画で最高だった。

 九龍城塞。そこではかつては壮絶な覇権争いがあった。平穏を取り戻した後もそこは無政府状態(史実)となり、独自のコミュニティが育まれていた。時は流れ、80年代。香港へ密入国した陳洛軍は黒社会の掟に背いたことで組織に追われることになる。逃亡の末、彼は九龍城塞に逃げ込み、龍兄貴の計らいで住みこむこととなる。最初こそ馴染めていなかった陳だが、城塞の人々の温かさに触れ、徐々に絆を育んでいく。平穏な日々は続くかと思われたが、ある日、陳の意外な素性が明らかになる。これを利用して九龍城塞を処分しようとする政府と黒社会は互いに結託し、過去の因縁を利用して絆を破壊しようと画策。九龍城塞は陳を逃がすために奔走することになる。過去の因縁、絆、信念、誇り、そして自分たちの居場所をかけた壮絶な戦いが幕を開ける・・・。

 非常に少年漫画的な映画だと思う。友情の話であり、はぐれ者がやってきてそこで絆を育み、「俺たちの居場所」を護るために戦うが一旦は敗れ、また再起して絆の力で勝利を収める。完全なジャンプ漫画。アクションは『るろうに剣心』の谷垣さんであり、リアリティラインのギリギリを攻めたアクションを見せてくれる。それでも本作が滑稽に見えないのは、九龍城塞の壮大なセットや、役者が実在感を以て存在しているからだと思う。

 役者は皆がMVPなのだが、いちばんは龍兄貴を演じたルイス・クー。貫禄が半端ではないのは勿論なのだが、義に厚く、類まれなる格闘スキルを持ち、病に侵されているにもかかわらず九龍城塞の皆を護るためには手段を選ばない・・・という、「少年漫画ですか?」というキャラ造形を違和感なくめちゃくちゃカッコよく演じている。サモ・ハン・キンポーも彼の功夫スキルを遺憾なく発揮しており、姑息ながらも自ら前線に出て戦う大ボスを好演。そして何より、事実上のラスボスである王九。気功の使い手であり、刃物、打撃を一切通さない「硬直」(要するにONE PIECEの「鉄塊」)とあらゆる物を貫通する「大力金剛指」(要するにONE PIECEの「指弾」)を用いる作中イチのチート。ヒャッハーキャラであり、コイツだけ比喩でなく少年漫画の世界の住人である。こういうクセの強い漢達が繰り広げるドラマは非常に密度が濃い。

 また、アクションも谷垣健治さんが設計しており、リアリティラインぎりぎりのものを見せてくれる。集団戦におけるその場のものを活かしたアクションから、ナイフ戦法、もちろん功夫の一騎打ちもあり、バリエーションが凄い。その上、龍兄貴の突きを受けたものが回転しながら飛んでいく、王九の気功など、外連味のあるものもある。しかし、これらが個人によってアクションの癖がきちんと分けられていて、非常に見やすく設計されている。

 そしてこれらをすべて丸っと包んでいるのが本作のMVPである九龍城塞のセット。実際に建てているため、実在感が半端ではないし、生活感が画面から感じられるものになっている。このドラマとアクションをこの圧巻のセットでやっているので、全く安っぽくなっていない。このフィクション的な部分にリアリティを持たせているのは間違いなくこのセットの功績だと思う。メチャクチャ楽しみました。最高です。