88点
1953年にアンリ=ジョルジュ・クルーゾーが監督した『恐怖の報酬』を、『フレンチ・コネクション』『エクソシスト』のウィリアム・フリードキンが1977年に制作した本作。試写で不評だったため、日本ではフィルムをズタズタに編集されて公開され、長らくオリジナルが公開されていなかったいわくつきの作品でもあります。本作は、この状態に不満を募らせていたフリードキンが執念の末、41年越しに実現させた作品です。そこまで執念を燃やして作った映画ですから、どれほどのものかと思い、鑑賞してみました。
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実際に観てみると、当時不評だった理由がさっぱり分からないくらい、素晴らしい作品でした。
本作は訳ありの男4人が、地獄のような今の生活から抜け出すために、莫大な報酬と引き換えにニトログリセリンを運ぶという内容です。まず、冒頭で描かれる主要人物4人の描き方が最高。必要最小限の台詞と、「これ人死んでるんじゃないの?」と思えるくらいの壮絶なシーンで彼らの背景を見せていきます。本作は全編に亘って台詞が少なく、俳優の演技や、演出で見せていきます。これくらい必要最小限なのは今の映画ではあまり見られないので、時代を感じさせます。
本作には、本作以前にフリードキンが撮ったノウハウが活かされている気がします。途中に入る『フレンチ・コネクション』風味のカメラワークとか、カーチェイス、そして、『エクソシスト』で見せたオカルト演出とかです。終盤のあのシーンでロイ・シャイダーに起こることは、これを彷彿とされます。この意味で、確かに本作はそれまでのフリードキンの1つの総決算的内容だったのかなぁとか思います。
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以上のような点も目立つ本作ですが、白眉はやはり吊り橋のシーン。トラックがとてつもなく恐ろしい「何か」に見え、自然が4人に襲い掛かります。自然こそ、本作で一番恐ろしい存在なのです。これに対するのはちっぽけな人間で、CGなど無いのでトラックは本物を使っています。故に、「これ人死んでるんじゃないの?」と思わずにはいられず、異様な緊張感に満ちています。
密林という地獄を潜り抜けた後に彼らを待つ運命も、突き放したもので素晴らしかったです。あそこまで緊張があって、ちょっと弛緩したところにアレですから、本当に上手いし、嫌になる部分でもあります(まぁフラグが立ちまくってるから予想できなくも無いけど)。ラストも後味が悪くて最高ですね。本当にこの映画は、「上げて、落とす」ばっかりだなと。これも直接的でなく、静かに匂わせる程度なのもいい。
このような演出とかは、今の映画ではあまり見られません。そういう意味で、本作は良い意味で一昔前の映画でした。