【ダーク・ウォーターズ 巨大企業が恐れた男】
93点
ウェストバージニア州のコミュニティを蝕む環境汚染を巡って、十数年にわたって巨大企業と戦い続けてきた弁護士、ロブ・ビロッドの物語。
脚本的には非常に地味で爽快感皆無な内容でありながら、トッド・ヘインズ監督の抑制のきいた演出と、ロブ・ビロッドの苦悩を体現したマーク・ラファロの好演で、最後までスクリーンに釘付けになる。
「不屈」を言う言葉がこれほど似合う人物はいないと思う。巨大企業はビロッドが事実を突きつけ、裁判で勝訴したとしても、中々贖罪を行わない。寧ろ、行わないことで原告の精神が擦り減るのを待っている。余談だけど、これは「遠い国」の出来事ではなく、日本でも全く同じことが起こっている。本作はこのような無情さをも淡々と描き出す。対するビロッドは精神的に疲弊し、最後には倒れてしまう。映画全体が淡々としているため、彼の苦悩がより伝わってくる。最後の最後で証拠が発見されるものの、それでも劇的な演出はせず、抑制を保つ。これで終わりではなく、寧ろ始まりなのだから。だからこそ、ラストの台詞「Still here」が胸をうつのであります。
【マークスマン】
82点
監督はイーストウッドの作品で長年助監督を務めていたロバート・ローレンツ。長年助監督を務めていたせいか、本作は孤独な老人と少年の逃走劇という点で、『クライ・マッチョ』と似ている作品。
本作は、「正しい道」を選んだ男の話。老境に差し掛かった男が、人生の最後に、少年に「正しい道」を選ぶことができるように助けを出す。対をなすのがカルテルの追手で、平気で人を殺す残忍な男だけど、「道」を選べなかったという過去もある。ちょっとした表情で、「俺もああなっていたかも…」と彼が羨ましそうに思っているのが分かる演出がとても良い。以上のように、ロバート・ローレンツは非常に手堅い演出をしていて、驚きは少ないけれども、水準以上の出来になっている。
2人の関係性は「疑似家族」までには発展しない。あくまでも「バディ」以上のものは無い。逆に言えば、バディを形成するまでを非常に丁寧に描いている。アクションに関しても必要最小限の動きで敵を仕留めるもので、こちらもとても堅実。
イーストウッドは新しいパートナーを見つけて新しい人生を見つけるけど、本作のリーアム・ニーソンは自分の命を他者のために使い、決して救われてはいない。あくまでもニーソンは孤独なのです。
【ハウス・オブ・グッチ】
77点
【ライダーズ・オブ・ジャスティス】
77点