暇人の感想日記

映画、アニメ、本などの感想をつらつらと書くブログです。更新は不定期です。

2022年冬アニメ感想①【その着せ替え人形は恋をする】

☆☆☆☆(4.2/5)
 
 
 「ヤングガンガン」にて連載中の、福田普一先生原作のラブコメ作品をアニメ化した作品。制作は、近年、高水準の作品を送り出しているClover Works。監督は『BLACK FOX』や「A3!」などの篠原啓輔さん。脚本は「東京リベンジャーズ」に参加し、「幼なじみが絶対に負けないラブコメ」にてシリーズ構成を務めた冨田頼子さん。キャラクターデザインに「冴えない彼女の育て方」の石田一将さん、メインアニメーターには「ダーリン・イン・ザ・フランキス」、「ワンダーエッグ・プライオリティ」に参加した高橋尚矢さんが揃います。
 実家が雛人形店で、祖父が雛人形の頭を制作する頭師であることが影響し、自身も雛人形制作が趣味である高校生、五条新菜。彼はある日、ひょんなことから同じクラスのギャルでオタクな美少女、喜多川海夢と接点ができる。自分の趣味を否定せず、尚且つ好きなものを好きと言える海夢にコスプレ用の衣装作りを懇願された新菜は、全く接点のなかったコスプレの世界に入ってゆく。
 
 あらすじを読めば分かるように、要は「乃木坂春香の秘密」や「俺の妹がこんなに可愛いわけがない」と似た構造を持つ作品だと思います。どちらも「男子高校生が、オタク趣味のヒロインに導かれ、オタクの世界に入っていく」という共通点があります。しかし、この2作ではヒロインのオタク趣味というものは「隠すべきもの」であったのに対し、本作の海夢はこの点をオープンにしています。この辺はアニメというものが市民権を得てきた、時代の変化を感じました。だからこの手の作品にありがちな、「オタク趣味をオープンにする」障壁が本作にはない。
 
 寧ろ特筆すべきは、趣味を隠し、「バレる」のが主人公である点。「乃木坂春香」と「俺妹」では、「趣味がバレる」のはヒロインであり、主人公はヒロインの「好き」を肯定(もしくは脅されるなどして協力させられる)し、サポートする役回りが常でした(そしてハーレムを形成する)。しかし、本作では「主人公がヒロインをサポートする」点は同じですが、この立ち位置が逆転していて、主人公がヒロインに「好き」を肯定してもらうところから物語が始まっているのです。これによって、本作には厚みが出たなと思っていて、「乃木坂春香」や「俺妹」などは、言ってしまえば「こんなオタク趣味を持ってる美少女いたらいいな」な男性側の願望を叶えていて、主人公というのは割と読者が感情移入しやすいように特段趣味のないキャラ付けをされていました。本作も「こんな美少女いたらいいな」な点はあるものの、主人公の趣味を、「男性が持つ趣味ではない」という偏見のせいでオープンにし辛いものにすることで、「好きなものを好きと言っていい」という点を肯定してみせていました。この点は多様な趣味が昔と比べれば認められた、現代的な点だなと思いました。過去に他にもこのような作品があったらすみません。
 また、「乃木坂春香」と「俺妹」と比べると、徹底して主人公とヒロインの関係性のみに注力している点も異なる点かと思います。この手の作品だと次々にヒロインが出てきて、オタクコミュニティを形成していったりして、皆で楽しく活動することが作品の面白味に繋がっています。しかし、本作では、さらに2人の女性キャラが出るものの、1期の時点では彼女らは単発のゲスト扱いで、特にコミュニティなどを形成することもない。代わりに、主人公とヒロインのコスプレ活動をどんどん描き、2人の間に流れる心地よい空気に視聴者を浸らせます。これにはライトノベルと漫画という媒体の違いもあるとは思いますが、2人の関係に焦点を絞って描いていたため、話の内容はいたってシンプルで、見やすい作品でした。
 
 本作は、話そのものはシンプルであり、コスプレという点から、見せ方が非常に重要な作品です。この点を豊かなアニメーションで描いています。京アニの影響と思しきキャラの日常芝居のつけ方で、動きが楽しいし可愛い。さらに、OPにも見られるように、「裁縫」がちゃんとアクションになっている。また、劇中のアニメの作り込みが半端ないクオリティ。映像的な面白さに加え、そこにコスプレの知識も無理なく入っているため、知識としても楽しい。アニメ化として、非常に理想的なものだと思いました。Clover Worksは同時に同じく超絶作画アニメ「明日ちゃんのセーラー服」も作っていて、化物ですね。
 
 以上のように、本作は過去の作品と類似する点は多いものの、現代的にアップデートされている点もあり、更にはアニメーションとして見ていて楽しいという、非常に良くできた作品でした。でも海夢、18禁エロゲーは良くないと思うぞ(一応言っとく)。
 

 

Clover Works作品。

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