暇人の感想日記

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迫りくる悪【ただ悪より救いたまえ】感想

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78点

 

 ファン・ジョンミン演じる孤独な殺し屋インナムと、彼に兄を殺され、執拗に追跡する殺し屋レイの激突を描いた韓国ノワール作品。監督は本作が2作目であるホン・ウォンチャン。彼はファン・ジョンミンが怪しげな祈祷師を演じた『哭声 コクソン』で脚本を執筆しています。そして撮影監督には『パラサイト 半地下の家族』のホン・ギョンピョがつきます。

 

 インナムは、日本での仕事を最後に引退を決意する。しかし、かつての恋人が殺され、インナムとの間にできた娘が誘拐された。インナムはバンコクに赴き、誘拐関係者を次々に拷問にかけて追跡を始める。しかし同時に、兄を殺された殺し屋レイも復讐のためにインナムの追跡に乗り出していた。2人の壮絶な殺し合いが、バンコクで繰り広げられる・・・。

 

 本作の監督は、ナ・ホンジン監督作『チェイサー』も手掛けていたそうで、「2人の男が追跡劇を繰り広げる」という点はよく似ています。面白いのは、この追跡が、どんどん規模が大きくなり、追跡に参加する組織が増えていく点。最初はレイ→インナム→誘拐組織という感じだったのが、バンコクの警察、誘拐組織、レイが手を組み、巨大な集団となってインナムを追跡していく様は、映画のスケールがどんどんアップしていくようでした。

 

 ホン・ギョンピョの撮影も素晴らしい。特に日本の撮影は素晴らしくて、知っている、馴染みのありそうな風景を撮っているのに、全体的に冷たい印象を与える青みがかった画面は、インナムの孤独を画面で象徴しているように思えました。そこからバンコクに移ってからはギラギラした、圧倒的熱量を持った画面に切り替わり、映画のトーンもそこに合わせてどんどんボルテージが上がっていきます。画面とストーリーのトーンが一体になっていたという点で、とてもいい撮影だなぁ(小並)と思いました。

 

 ただ、不満はあって、というのも、とても惜しいと感じたから。序盤の日本のシークエンスは、画面やトーンから韓国ノワールを逸脱した何かになれそうな気配を感じたのですが、最終的に「無難な韓国ノワール」になってしまったのは、少しだけ残念でした。

 

 

ホン・ウォンチャンが脚本を執筆した作品。

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