暇人の感想日記

映画、アニメ、本などの感想をつらつらと書くブログです。更新は不定期です。

2021年秋アニメ感想②【先輩がうざい後輩の話】

f:id:inosuken:20220104135003j:plain

☆☆☆★(3.6/5)
 
 
 しろまんた先生原作、作者のTwitter上で連載され、一迅社より書籍化されたという経緯をもつ漫画が原作。一迅社Webコミック配信サイト「comic POOL」でも連載されています。少しガサツだが面倒見の良い会社の先輩である武田と、武田をうざいと思いつつも実はまんざらでもなかったり、しかし素直になれない後輩の五十嵐の関係を描きます。制作は「幼なじみが絶対に負けないラブコメ(以下、おさまけ)」で大幅に評判を落とした動画工房。監督は同じく動画工房制作の「イエスタデイをうたって」にて副監督を務めた伊藤良太。脚本は「プリキュア」シリーズや「墓場鬼太郎」の成田良美。「おさまけ」で大幅に評判を落とした動画工房がきちんと復活してくれるのか、というちょっとした緊張感をもって視聴しました。
 
 結論から言うと、動画工房はきちんと復活してくれました。日常芝居の豊かさ、レイアウトがキチッと決まっているカットの数々、そしてキャラの心情をしっかりと捉える演出、全てが、我々が期待している「動画工房」でした。「おさまけ」のファンと原作者は泣いていい。肝心の内容に関しては、まぁ、可もなく不可もなく、という感じではありますけど、それはそれ。
 
 本作は、アニメ作品としては珍しい、「会社」が舞台となっています。日本アニメは、とにかく学生が主人公の作品が多く、中でも根強いジャンルとしてあるのが「高校生に何かやらせてみた」シリーズです。これは色んな制作会社が手を出しているのですが、動画工房はその代表的な存在です。「会社」が舞台ということなら、P.A.Worksの「お仕事もの」みたいな感じなのかなぁとか思っていたのですが、はてさてその中身は何てことは無い、舞台を「学校」から「会社」に移しただけのラブコメ作品でした。本作が「会社である必然性」は特には無く、高校生の部活とか友情が会社の仕事に置き換えられただけな感じがします。本作でも会社というのは学校みたいな安全地帯の側面が強く、理想的な場所として描かれます。営業なのに直帰しすぎだろとかみんな早く帰りすぎだろとか色々と羨ましい点があります。しかも会社の中のことが具体的に描かれるのは1話と最終話くらいで、後の間の話は「お前ら高校生か!」と言いたくなるラブコメが展開されます。しかもそれはただ見てニヤニヤ出来るだけで(いやまぁ良いんだけれども)何の進展もしないし、仕事一切関係ない休日の遊びとか夏休みの旅行とかそんなんばっかです。しかも社内イベントはクリスマスだバレンタインだといったイベントを「学生か!」と突っ込みたくなるようなノリでやっているわけです。社会人になってバレンタインにあんなに一喜一憂している奴っているのか・・・?だいたい義理チョコもなく終わりだろ!
 
 つまり本作は、学校から会社へ舞台を移しただけのいつも通りのラブコメ作品であり、そこには少しガッカリしました。いやまぁ、アニメの中でも取引先のクレーム対応とか無茶ぶりばかりする取引先に殺意を抱いたりとか先輩がとっつきにくくて一緒にいるだけでストレスだとかそういうのやられても困るんですけども。でも、せめて「SHIROBAKO」の宮森みたいに冷蔵庫の中に発泡酒常備くらいはさせておけ!
 これ以外の不満点というか、常々感じているものとして、この手のアニメ作品の構成の問題があります。本作の縦軸としては、ラブコメ以外に、五十嵐の成長という要素があります。で、一応1話と最終話で対比になるような構成をとって、五十嵐の成長を描きました。これ事態は別に良いんです。ただ、問題はその間の話です。上述の通り、間はひたすらラブコメをやっているわけです。仕事の描写は何かPC弄ったり電話対応してるくらいしかないので、せっかく五十嵐の成長を描いても、それを埋める話がないため、唐突な感じが否めない。しかも、プレゼンが上手くいったってのは良いんだけれども、五十嵐が取引先の会社に入ったら次のカットでもう出てくるので、「何をしたから上手くいったのか」が分からない。この点を具体的に描いてほしかった。しかもこの話は、間で繰り広げられていたラブコメ話が一切関係ないので、ここでも乖離してしまっている。間に仕事のエピソードを入れるとか、もう少しやりようはあったんじゃないのかな、と思います。
 
 また、これは私がこの手の作品に常々感じていた不満にも直結しています。つまり、「最終話でいきなりシリアス展開をぶっ込んで、何となく終わりっぽい感じを出す」という構成です。1話は導入としてしっかりと作っているのですが、間の話が基本的に他愛もないギャグ話ばかりで大してストーリー的な繋がりもないのにもかかわらず、最終話でそれっぽいテーマとかを主人公に語らせて終わらせる、という内容の作品は、唐突でいつも違和感を覚えてしまいます。最近だと「魔王城でおやすみ」とか、後は「アニマエール」かな。まぁこれは連載途中で、ストーリーでないコメディ作品の構成をするうえで鬼門だとは思うわけですが。
 
 以上が私の感想でした。まぁ、何やかんや楽しんで見れましたよ。それと、夏美は一体何の職に就いているんだ・・・。お爺ちゃん回は大塚明夫さんの演技が素晴らしく、個人的にはベスト回。