暇人の感想日記

映画、アニメ、本などの感想をつらつらと書くブログです。更新は不定期です。

2021年秋アニメ感想①【古見さんは、コミュ症です。】

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☆☆☆☆(4.2/5)
 
 
 オダトモヒトさん原作、週刊少年サンデーにて連載中の漫画を原作としたアニメ作品。人と話すことが極端に苦手な、「コミュ障」である古見さんと、彼女の理解者となる只野君を中心とした学園コメディ。総監督は「恋は雨上がりのように」『海獣の子供』の渡辺歩、監督は本作が初監督となる川越一生。脚本を赤尾デコが務めます。制作はOLM.TEAM.KOJIMA。要は「ポケモン」でお馴染みのOLMの1チーム。私が本作を視聴しようと思った理由は、もちろん渡辺歩さんが関わっているから。彼の作る作品は大体面白いので、ハズレは無いだろうと考えたのです。
 
 感想としては、少しだけ引っかかる点はあれど、楽しんで見ることができました。本作は「コミュ障」を扱っている作品ではありますが、基本的にはコメディであり、「コミュニケーション」という主題をそこまで深刻に扱ってはいません。1話こそ、古見さんがコミュ障であることでどれほど悩み、葛藤してきたかが描かれ、それがラストの黒板での「会話」に繋がっていきます。1話は彼女の苦しみを視聴者に理解させる演出がよく出来ており、そこを踏まえた上での最後の黒板は、コミュニケーションの楽しさや豊かさ、幸福感が絵的にバッチリと伝わる素晴らしいシーンでした。ここで私は本作に対する考えを少し改め、割と真摯に「コミュニケーション」を描こうとしているんだな、と思いました。これ以外にも、本作の演出は全体的にパワフルというか、ギャグ的に誇張したものと繊細な演出の緩急がついていて、この辺のメリハリも良かったなと。
 ただ、2話以降は、視聴前の私の予想通りな内容になっていきました。つまり、「コミュ障」である古見さんの奮闘をチャーミングに描き、同時に癖の強すぎるキャラ達の暴走を組み合わせることでコメディとして描くという内容です。ここのバランス感覚はとてもいい塩梅で、ともすれば「コミュ障を笑う」という倫理的に絶対に許されない内容になりそうなところを、古見さんの反応をチャーミングに描くことで中和していると思います。ハッキリ言うと、「コミュニケーション」を題材とした作品としては、キャラ達の古見さんへの好感度が100%どころか1000%くらいになっていいて、古見さんのあらゆる行動を勝手に拡大解釈して好意的にとってしまうため、古見さんが「みんなに好かれる」という努力をしなくてもいいという状態になっているのです。そのため、「相手とぶつかって絆を深めていく」的な人間関係ドラマとしては弱いのです(一応、山井には意思表示をしたけど)。というか、いちばんコミュニケーションを頑張っていたのは中々思春じゃないの?まぁ、コメディだから良いだろと言われるかもしれないし、実際私もそう思いながら見ていたのですが、最終話の最後によせばいいのに「コミュニケーションに悩む全ての人々へ」的なテロップが出るんです。1話はともかく、2話以降の上述のような内容の本作を見て、「コミュニケーションに悩む」人々のエンパワメントになるのかな、という点は疑問です。ここが少し引っかかったところです。
 
 ただ、これに関しては、私は逆の見解も持ってはいて。 つまり、古見さんはディスコミュニケーションであるという点です。つまり、皆過剰に古見さんを慕っているのですが、それは彼女の本当の姿ではなく、彼ら彼女らが勝手に抱いている幻想のもとに慕っているわけです。それはある意味では悲劇であり、「本当の古見さん」を知らないという点で、ディスコミュニケーションの極致みたいな感じです。だから、尾根峰さんのエピソードは印象的で、只野君となじみ以外で多分初めて古見さんの素の姿を知って友達になった人だと思います。まぁ、この誤解も只野君が解いてくれるんですけどね。でも、こういう誤解込みでも、古見さんみたいなコミュ障の人が問題なく過ごせるあの世界は、優しいんだとは思いますが。
 

 

コミュニケーションもの。

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川越さん演出参加作品。

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青春学園もの。

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