暇人の感想日記

映画、アニメ、本などの感想をつらつらと書くブログです。更新は不定期です。

ナメてた警備員は、ジェイソン・ステイサムでした・・・【キャッシュトラック】感想

キャッシュトラック

 
82点
 
 
 ガイ・リッチー監督作品。2021年に日本で公開された作品としては2本目です。観る優先順位としては割と低めだったんですけど、予告が非常に面白くて興味を惹かれたこと、『ジェントルメン』も観て面白かったこともあり、鑑賞しました。
 
 『ジェントルメン』と同じく、本作でも語り口はトリッキーです。しかし、『ジェントルメン』では過去の出来事をフレッチャーの回想で描いていくだけだったのですが、本作では1つの事件を多角的な視点で捉えるという、「羅生門スタイル」をとっています。これによって、本作の「復讐劇」という極めてシンプルな内容が、約2時間、常に緊張感漂うサスペンスフルな内容になっているのですから大したものだと思いました。ただ、本作は復讐劇に徹している都合上、『ジェントルメン』にあったような軽妙さはありませんが。
 
 本作は4幕構成をとっています。そしてそれぞれ事件の「視点」が違います。1幕目は車内を視点とし、事件の概要を観客に理解させます。ここを始めとして、本作では長回しを多用していて、画面の中の緊張感を一気に転調させる演出が上手いんですよね。そこからステイサムが警備会社に入社し、意味ありげなショットを積み重ねていって、観客に「コイツは何かあるな」と思わせます。

 

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 そして2幕目では事件の視点をステイサムにし、ステイサムの真の狙いが明らかになります。ここで本当に素晴らしいシーンが幾つかあって、ガイ・リッチーの楽曲を用いた画面の緊張感を高める演出が冴えわたっているんですね。具体的に言うと拷問シーンなんですけど。そこ以外にも、何か、女性たちを誘拐、監禁?だかしていた男の家に行って、その組織の構成員たちを皆殺しにしていくときの画面のテンションの変わり方の上手さとかも素晴らしかったです。
 
 3幕目では視点は「犯人」になり、ここで話のジャンルが元傭兵たちのケイパーものになります。ここの見所は作戦立案と実際の作戦をカットバックで見せている点。現実と作戦の齟齬も面白いですし、立案と同時に見せてくれるため、彼らが何を目的とし、どのように動くのか、を効率よく説明しながら作戦の遂行を観ることができます。ここで全ての真相は明らかになり、最終章である第4幕になだれ込みます。ここで激しい銃撃戦になるのですが、死体がどんどん積まれていくアクションは、凄惨ながらどこか映画的な興奮を覚えます(ヤバい奴の文章)。いや、こんな光景、映画でしか観れないし観たくないじゃないですか。そこから一騎打ちになり、最後にステイサムが復讐を遂げるというラストです。単純な復讐劇を、脚本の上手さで何倍にも面白く見せる、という点がとても良くできた作品で、私は『ジェントルメン』より好きでした。
 
 また、本作で良かったのが、スコット・イーストウッドです。あからさまなイーストウッドオマージュのショットもありましたが、常に仏頂面でヒールを演じている姿の貫禄は十分で、本作の悪役として完璧な存在感でしたね。