暇人の感想日記

映画、アニメ、本などの感想をつらつらと書くブログです。更新は不定期です。

効率化ではなく、前に進むための「捨てる」行為【ハッピー・オールド・イヤー】感想

ハッピー・オールド・イヤー

 
56点
 
 
 きっかけはポパイの映画特集で取り上げられていたことでした。ここで存在を知り、観てみるか、と思ったのですけど、何やかんやで時間が取れず、観るのが年を越してしまいました。
 
 「断捨離」という言葉があります。端的には不要なものを断ち、捨て、「もったいない」という固定観念から解放され、身軽で快適な生活を手に入れる、という思想です(by Wikipedia)。主人公はこの思想にかぶれ、「ミニマル主義」を標榜。家にある、大量の「不要なもの」を捨てにかかります。しかし、誰にも経験があるとは思いますが、「物」には思い出があるんです。1つ1つの物に思い出があり、それを捨て去ることなどできないのです。そこに主人公が気付くというのが、本作の内容です。
 
 「物に思い出がある」ことを見せるために、ある特定の「物」に対する思い出が、オムニバス形式に近い形で語られます。これはこれで良いのですけど、正直、似たような展開が続くし、しかも1つ1つが淡々としているということで、ちょっと単調になってしまっている感は否めませんでした。ただ、これらを経て、「効率化」のために捨てるのではなく、人生を前に進めるために「捨てる」選択をした主人公は、最後に少しだけ成長したのだと思います。
 
 こう考えると、本作は「捨てる」映画であるということが分かります。近年は「断捨離」という言葉が流行し、「捨てる」ことで身軽になることが大切、余計なものは捨てることが効率的である、みたいな効率優先の思想が流行っていますけど、本作はそこから真向に反対しています。「物」には思い出とか思い入れがあり、それらは効率とかで切り捨てて良いものじゃないんだよという。しかし、「捨てる」ことは必ずしも悪い事ではありません。人生においては、何かを「捨て」、ある重荷から自由になる事も重要だからです。これによって、人生を前に進めることもできます。これこそが人生のおいて必要な「断捨離」であり、そこに気付いた人間の物語が、本作だったのだと思います。