暇人の感想日記

映画、アニメ、本などの感想をつらつらと書くブログです。更新は不定期です。

短文感想【悪人伝】【悪の偶像】【ザ・プロム】

 2020年も映画をそこそこ観たのですけど、全く感想が追い付かず、気付けば感想書いてない映画が40本くらい積み上がっていました。なので、短文ですけど映画の感想を纏めて書いてアップします。これからも何回かアップしていきたいと思います。
 
【悪人伝】

https://d2ueuvlup6lbue.cloudfront.net/attachments/6f6f7f23fdb73d46572d7babaf775ca8758621ff/store/fitpad/260/364/9ef3c2b01cefb13454c08c0a6591f609a824a71978145e125ecfb6f8ca47/_.jpg

 
77点
 
 基本的には、韓国フィルム・ノワールの焼き直し的な設定のオンパレード。しかしそこにマ・ドンソクという漢を投入するだけで、ここまでフレッシュで、血沸き肉躍る内容になるとは。本作はマ・ドンソクのスター映画であることに間違いはなく、この点のみで言えば、本作は100点満点の映画です。残虐なドンソク、ちょっと優しいドンソク、お茶目なドンソク、多種多様なドンソクが観られる最高のドンソク映画が、本作です。
 
 しかし、見せ方的にはちょっと一捻りしてあるものが多く、まずは冒頭のサンドバックです。ドンソクがあの二の腕で殴っているのですが、ただ殴っているのかな、と思っていたら中から人が出てくるショック演出。これで、本作のドンソクは残虐な性格なのだと示されます。また、相手の歯を引っこ抜くという凶悪ぶりも見せてくれます。まぁ、中盤の傘の下りはドンソク的にも、ストーリー的にもあざといなとは思いましたが。
 
 また、マ・ドンソクという最強の漢を活躍させるため、ドンソクを「追う」側に設定したのもなるほどなという。つまり本作は、韓国ノワール風作品の中に、マ・ドンソクという最強がいたら?というかもしれない作品であり、陰鬱でやりきれないノワールを、悪が悪を裁くという正統派エンタメ作品にしてしまった作品なのだと思いました。そしてそれ故にドンソク映画としても100点なのです。
 
 
【悪の偶像】

https://d2ueuvlup6lbue.cloudfront.net/attachments/cd367df585efcad046a64b198896cccfd33bcc3d/store/fitpad/260/364/08403bc462cf1e79af9f6747fc8e4fc0dbd5793c4e6b2cf5ffdb5c553cb7/_.jpg

77点
 
 引き続いて韓国ノワール作品。序盤こそ、息子を轢き殺された父親・ジュンシクが、犯人を突き止めるべく奔走し、加害者の父親であり、清廉潔白なイメージで売り出している政治家ミョンフェに辿り着くという王道展開です。しかし、両者が交差した瞬間、そしてリョナが本格的に物語に参加した瞬間、物語は暴走を始め、予想もつかない展開へとドライブしていきます。それはさながらナ・ホンジンのような訳の分からなさであり、リョナは『哀しき獣』の社長クラスのバケモノであることが判明します。
 
 本作は非常に難解な作品であり、事ある毎に「偶像」のメタファーが出てきます。後半のジュンシクは完全にミョンフェの偶像になりますし、リョナも、ジュンシクにとっての「偶像」になります。そして、何度も象徴的に出てくるのがイ・スンシン像。パンフのコラムによれば、このイ・スンシンとは韓国では英雄であり、それを侮蔑するということは、日本で言うところの皇居外苑楠木正成像の首をもぎ取るにふさわしいそう。この像に代表されるように、本作では、誰もが偶像を見ています。そしてそこにある「本物」を見ていない。だから終盤でジュンシクは像を爆破したのかもしれない。偶像ばかりを見ているこの国の「病」への、せめてもの抵抗として。ただ、意欲的な作品だとは思うのだけれども、破綻気味なのは間違いないので、評価は微妙ということで。
 
 
【ザ・プロム】

https://d2ueuvlup6lbue.cloudfront.net/attachments/9ad19ea1b7dbae65c7736a03455b9d2c4e601c03/store/fitpad/260/364/8657dc312a0275b7aec81c4fc22adcd871f39dd89298fadc4636453ca823/_.jpg

 

62点
 
 近年、ポリティカル・コレクトネスやジェンダー平等、LGBTQへの差別抑止の訴えが盛んに言われ始め、映画界ではだいぶ浸透してきました。これを「表現の自由を抑止する」と言ってしまうバカ者も中にはいるのですが、役者はこれらの促進に声をあげ、チャリティー活動も盛んに行っています。本作は、この点へ若干の批評的な視点を加え、その上でミュージカルとして歌って踊ってしっかりとこれらの大切さを訴えかけるという作品になっていました。
 
「ベテラン舞台俳優のディーディーとバリーは往年の人気を取り戻すべく大作ミュージカルで勝負に出たが、批評家からコテンパンに酷評され、俳優生命の危機に陥っていた。2人が起死回生の秘策を考えあぐねていると、インディアナ州に住む1人の高校生・エマに関する話が耳に入ってくる。エマは同性のパートナーであるアリッサとプロムに参加しようとしたが、保守的な土地柄もあり、PTA会長のミセス・グリーンたちから猛反対を受けて参加を禁じられたという。ディーディーとバリーは「エマを助ければ自分たちのイメージも好転するに違いない」と考え、同じく売名を目論んでいた後進の俳優・アンジートレントと共にエマが暮らす街へ向かうが・・・(Wikipediaより抜粋)」
 
 役者が凄く良いんですよね。何て言っても、メリル・ストリープですよ。彼女はリベラルの代名詞みたいな役者じゃないですか。そんな彼女が人気をとるためにとりあえずのリベラルを気取っているわけですけど、彼女らが本当に問題に直面している本人と真の意味で向き合うことで問題を再度認識し直し、売名抜きで本気で何とかしたいと思わせるという描き方は、とても誠実だなと思いました。
 
 後、校長が凄く良かった。ファンだった女優と出会ったときのミーハーな感じとか、幻滅する感じとか、何より、「ミュージカルを観に行く理由」が凄く良い。彼が思っていることは、我々映画ファンが思っている事と同じで、映画とかミュージカルがあるから救われる部分も間違いなくあるのです。だから映画館は不要不急のものだけれど、おいそれと閉めちゃいかんのだぞ。
 
 そもそもミュージカル自体がそこまで得意じゃない&この手の皆ハッピーでめでたしめでたし系の話にそもそも乗れないことも相まって点数はチョイ低めですけど、良い映画ですよ。