暇人の感想日記

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2020年春アニメ感想⑥【富豪刑事 Balance:UNLIMITED】

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☆☆★(2.8/5)
 
 
 今期は、①4月に放送開始されたものの延期して夏に仕切り直して放送された作品と、②4月放送予定だったものの7月に放送開始そのものが延期された作品の2種類があるため、①に関しては「春アニメ」として、②に関しては「夏アニメ」としてカウントします。
 
 
 筒井康隆先生原作のアニメ化作品。過去に深キョン主演でドラマ化されましたが、アニメ化は本作が初。監督は「ソードアートオンライン」や『HALLO WORLD』の伊藤智彦さんで、脚本は「うさぎドロップ」や「はねバド!」などの岸本卓さん、キャラクターデザインは「青の祓魔師」などの佐々木啓悟さん。制作はA-1 Pictures。とりあえず筒井康隆の作品のアニメ化という時点で興味はありましたし、それがノイタミナ枠で放送されるとあれば期待値はまた上がるというわけで、視聴を決定しました。
 
 本作の最大の特徴にして面白い点は、「とにかく金を使いまくる」の1点。普通の刑事ドラマならば地道な捜査とアクションで済ませてしまいそうなところを、主人公の神戸が、自分の会社の金を湯水のように使い、ハリウッド大作かインドのアクション大作映画か!と言いたくなるレベルの一大スペクタクルでもって事件を解決してしまいます。金にものを言わせたガジェットも素晴らしい(ブラックパンサーの臆面もないパクリもある)。しかも彼はヒュスクという社会のあらゆるネットワークに侵入できるチートAIを持っているので、出来ないことがなく、その圧倒的な力を行使するバカバカしさ、言い換えれば清々しさがあります。また、各話の最後に使用した全額が分かり、毎回数十億かかっていたりすることがトンデモ感を加速させています。

 

 本作はこの辺をかなり割り切って作っていて、それはとてもよろしいと思いました。こういうトンデモバカな作品は嫌いではないです。ただ、それ以外の点はどうかといえば、「普通」の一言でした。本作は財閥の御曹司であり、金の力で全てを解決する神戸(大貫勇輔さんの好演もあって、「周囲とは違う存在」感が強かった)と、正義感が強い刑事、加藤のバディものとしての側面があって、この2人が互いを信頼していく過程はそれなりに描けていて、最後には加藤の真っ直ぐな正義こそ、悪を倒すことができるのだぜ的な結論に向かったのだと思います。また、最後の事件も、一大財閥の陰謀を暴くという、良い意味で普通の刑事ドラマのような内容だったと思います。

 

 この神戸という男の目的は、最初から母親の事件を解決することです。そしてそのために警察になったというのが動機です。私は視聴を始めたときから、「こんな金を持ってる奴が刑事になるなんて、絶対「金では手に入らない何か」を求めているんだろうなぁ」と思って見ていました。なので、正直言って、この動機には結構肩透かしでした。「普通じゃん!」って。というか、あれだけの権限と金があれば別にならなくても良かったんじゃねと思います。劇中で警察であることが活きたことってほぼないし。それならば、それこそ原作通り「父親から譲り受けた巨万の富を罪滅ぼしのために使いまくる」という設定にした方が良かったような。
 
 このように、本作は「金を使う」という設定が物語やテーマとあまり絡んでおらず、キャッチーな設定止まりになってしまっています。そして後に残ったものは、ありきたりな「刑事ドラマ」的な内容でした。上手くいけば面白くなりそうなものを、ちょっと勿体ない作品になってしまったなと思います。
 

 

伊藤監督作品。 

inosuken.hatenablog.com

 

 筒井康隆作品。こちらは大傑作。

inosuken.hatenablog.com