暇人の感想日記

映画、アニメ、本などの感想をつらつらと書くブログです。更新は不定期です。

2020年夏アニメ感想①【GREAT PRETENDER】 ※ネタバレあり

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☆☆☆☆(4.4/5.0)
 
 
 +Ultra枠の作品。『スティング』や、同じくフジテレビで放送されていたTVドラマ「コンフィデンスマンJP」と同じく、騙し合いを描いたコン・ゲームです。制作は「進撃の巨人」や「恋は雨上がりのように」のWIT STUDIO。監督は「鬼灯の冷徹」や「君の届け」の鏑木ひろさんで、キャラクターデザインはメインキャラは「新世紀エヴァンゲリオン」の貞本義行さん。そして何と言っても、脚本は「リーガルハイ」や「コンフィデンスマンJP」など、これまで実写作品を手掛けてきた古沢良太さんです。古沢さんの作品はとりあえずチェックするくらいにはファンですし、制作は信頼のWIT STUDIO。ここまで要素が揃えば「見る」以外の選択肢は無いので、NETFLIXにて先行配信で視聴しました。先行配信でも、まだCase4が配信されていないので厳密には終わっていない作品なのですが、今書かないと内容を忘れそうなので、とりあえずCase1~3の内容で感想を書いていきたいと思います。

 

コンフィデンスマンJP DVD-BOX

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  • 発売日: 2018/09/19
  • メディア: DVD
 

 

 Case1は、「どんでん返し」のサプライズの数は一番多い話。というのも、このCaseの中心人物は主人公のエダマメであるため。視聴者と同じく、ローランたちへの知識がゼロの状態であるため、次から次へと起こるどんでん返しに驚くことができるのです。ここではローラン達のメンバー紹介を兼ねているため、エダマメは何回も騙され、そして騙されるたびにローラン達の組織の全貌が分かってくるという作りになっています。まぁそれ故に後出しじゃんけん感が出てしまってはいますし、最後の方に至っては免疫が出てきて、だいたい予想がついてしまいますが。ちなみに一番驚き、満足度が高いのは第1話です。こういうのは最初が一番騙しやすいですからね。余談ですが、『スティング』だって、最初に一番騙されました。
 
 以上のように、Case1は「初見」であることを最大限に活かしてサプライズを用意しまくった回でした。しかし、Case2、3ではもうメンバーが分かっているので、同じようなどんでん返しは使えません。なので、Case2、3では『スティング』と同じように、「ケイパーもの」として、そしてキャラの面白さで見せていきます。具体的に言えば、メンバーと共に相手を騙すためにどのように準備して、成功へと導くのか、という下りを描いていきます。ただ、このケイパーものとしての内容は、作劇上仕方ないのでしょうけど、「しっかりと事前準備をした結果」というよりは、かなり運に頼った展開が多かったり、キャラが勝手な行動をしたりして、結果的には上手くいくのですけど、全体的には偶然に頼りすぎな印象です。特にCase3のシンシアとか、アレは危険すぎる行動だったなぁとか、Case2のアビーも、克服したから良いですが、あそこまで不安定で大丈夫なのかなとは思いました。しかし、キャラ回としては良くまとまっているなと思えるため、Case1とはまた違ったカタルシスがあります。
 そして本作はサプライズにプラスして、Case1毎にメインキャラそれぞれに焦点をあて、深掘りしていく構成をとっています。具体的には、Case1はエダマメ、Case2はアビーで、Case3はシンシアです。そして未だ配信も放送もされていないCase4では、ローランになると思われます。共通しているのは、Case毎に各キャラが自分の人生に1つの区切りをつける話だということです。エダマメは彼の過去から犯罪に走ってしまった過去を清算し、アビーは彼女の戦場でのトラウマと憎しみの克服、そしてシンシアは因縁の相手を騙し、元彼との関係に区切りをつけます。
 
 面白いなと思ったのは、エダマメとシンシアのエピソードです。両者とも、元は善良な「一般市民」であったのが、エダマメは父親が犯罪者だから定職にも就けず、母親が死んでしまったことで真の犯罪者になってしまいます。そしてシンシアは、彼女自身がというより、彼の元彼が生活と若干の承認欲求のために犯罪に走り、人生を棒に振ります。しかし、エダマメも元彼も、彼らがしてきたことが誰かを不幸にしていることを認識し、何とかそれを清算しようとするのです。シンシアはその清算に手を貸した感じです。このキャラ回が積み重ねられるため、見進めるごとにキャラに愛着が湧き、彼ら彼女らの活躍がもっと見たくなるあたりはさすがだなと思います。
 
 主題は「信用詐欺師」であるにもかかわらず、ドラマ的には、このように、「社会からあぶれてしまった人間の物語」なわけです。そして彼ら彼女らが、社会で悪事を以て「信用」を得て、荒稼ぎしている奴らを「騙して」、成敗する。本作にはそのような痛快さがあります。エダマメはまだ「善」の側につきたくてフワフワしている、視聴者に近い存在です。彼の物語はまだはっきり終わってはいませんし、ノーランの物語もまだ描かれていません。本作がどのような終わらせ方をするのか、そして何より、もっと彼らの活躍が見たいので、Case4はよ。
 

【Case4を見て】

 Case3までは楽しんで見ていましたが、Case4を見て、ちょっとどうなんだと思ってしまいました。確かに、話そのものは本作自体が本命を狙うための大仕掛けであり、全ての伏線が一気に回収されるものでした。そして同時に、本作に対して批評的な視線を加えて、本作にあった引っ掛かりを前面に押し出してきます。だから、エダマメの最後の台詞は本筋とは別の意味で痛快でした。
 
 しかし、そこからの処理が問題で、エダマメはやっぱり騙すことに協力してしまうんですよね。表明した怒りはそのままで。これ、父親がしたこととかは何も清算されていないし、エダマメにとっては嫌な話でしかないのではないでしょうか。何か、「良い話」感を出してましたけど、社会的には父親は犯罪者のままですし、母親は(多分真相を知っていたとはいえ)、結局父親の我儘に付き合って死んでいったわけですから。さらに、これまで騙してきた人間達とも仲良くなってるってどういうことだ。仲良くなって一緒にビジネスをしたからって、禍根が消えるわけではないだろう。あそこまでエダマメに言わせるなら、ローラン達に何かしらの報いはあっても良かったんじゃないかな。と、Case4を見て、少しモヤッとしてしまい、評価が下がりました。あ、でも「嫌な話を嫌な話として終わらせる」ということはある意味で誠実な態度ではあるのかな。