72点
NETFLIX独占配信の映画。監督はサフディ兄弟で、主演はアダム・サンドラー。批評家からの評価が非常に高い作品だったこと、新型コロナウイルスの影響で映画館が休館してしまっていたこともあり、自宅にて鑑賞しました。
本作を観てまず感じたことは、「うるさい」ということ。本作は、いきなり観客を宝石商の世界に引きずり込みます。そこでは常にアダム・サンドラーがブチ切れて誰かを怒鳴っていて、それだけでもうるさいのに、そこにさらに別の人物の怒鳴り声や会話が重なり、加えてハワードは常にスマホをいじくって何かをしていて、物語が動いている。本作は1つの画面にいくつもの情報が重なっていて、ストーリーのスピードも速く、しかも声が反響してうるさいので観ていて非常に疲れます。これは登場人物達が置かれている状況のカオスぶりを体験させるという意味では良い演出なのですけど、ちょっとやりすぎ。吹き替え版だと声の反響がないのでうるささは半減されていましたけど。
本作は、カリスマ宝石商であるハワード(アダム・サンドラー)のダメダメぶりを描いた作品です。カリスマ宝石商だけど、金の宝石を盗まれて借金まみれ。それを返す金が手に入ってもすぐにギャンブルに使ってしてしまい、磨ってしまう。そして最終的には大金を手にした幸福の中で死んでしまいます。要は本作はこのハワードの狂気的な、エキセントリックな行動を観るものなのです。この辺を楽しめるかどうかで本作の評価は大きく変わってきます。別に感情移入できたかとかではなく、この狂気ぶりを楽しめるかどうか、ダメな奴らが自滅していく様を観られるかどうかが重要なのだと思います。だからカタルシスなどないのです。
で、私はと言えば、「好きか嫌いか」で言えば「好き」なんですけど、その程度も「嫌いじゃない」くらいなものです。つまり「ナシ寄りのアリ」みたいな。主人公のエキセントリックな感じとか、冒頭の「地元の人間の労働力を搾取して獲得した鉱石が体内で一体化している」という演出とかは興味深く観ました。冒頭の解釈をもう少し深く考えてみると、本作は「欲望にまみれた人間の末路」という因果応報的な内容に捉えることも出来なくもないと思います。でもハワードは欲望の絶頂で死ぬので、彼にとってはこの上ないくらい幸福だったと思いますが。この悪趣味なくらいのダメっぷり描写は一周回って面白かったなと、今になってみて思った次第です。
これも因果応報的と言えばそう。
別の意味でのダメ集団映画。