暇人の感想日記

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組織の中で、自身の信念を貫いた男たちの物語【フォードVSフェラーリ】感想

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91点

 

 

 鑑賞したのは1月なのに後回しにしまくってしまってこの時期になってしまいました。まだこの時期に観て感想書いてない映画が多いので、早めに何とかしたいなと思います。

 

 さて、本作は『LOGAN』を監督したジェームズ・マンゴールド監督の最新作になります。私は実は彼の作品は鑑賞したことがありませんし、何なら車にも全く興味がありません。それでも鑑賞しようと思ったのは予告が面白そうだったのと、マンゴールド監督の作品は評価が高い作品が多かったためです。アカデミー賞にもノミネートされてるしいい機会なので鑑賞した次第です。

 

 本作は素晴らしい「マン映画」です。「フェラーリに勝つ」という目的の下共に仕事をする2人の一匹狼が組織委員会と対立し、その過程で絆を深め、偉業を成し遂げていく話です。本作の大筋は「フェラーリに勝つ」ことよりもこの2人が絆を深めることに焦点が置かれていて、それはほとんど少年マンガです。それもジャンプとかマガジンとかの。この2人、一匹狼なので最初は我を通そうとしていて対立してばっかりなんですけど、そんな2人が対立して、喧嘩して、仲直りして絆を深め合う姿は本当に観ていて胸アツなんです。しかもこの2人は、彼らだけが到達し、彼らだけが知っている世界を共有していて、だから絶対的な絆を結べるのです。そしてシェルビーはマイルズに自身の夢を託しているというのも胸アツ。

 

 

 そしてそんな2人の前に立ちはだかるのはフェラーリ・・・ではなく、フォードの組織委員会という組織です。要するに池井戸潤の作品と同じです。彼らは組織の論理の下、様々な思惑を巡らせ、2人のレースにかける純粋な思いに横やりを入れてきます。彼らの多くは組織運営しか頭になく、「何も見えていない」のです。そんな組織の人間達に対してマイルズとシェルビーの2人とその周りの人間は反発し、自分たちのために仕事をしていくのです。このVS組織員会という構造で、より2人の特別な関係感が強調されていると思います。

 

 ただ、本作は「組織=悪」のように単純化しては描いておらず、組織の中にも彼らに理解を示してくれる人間がいることもきちんと描いています。リー・アイアコッカなんてその代表的な存在ですし、白眉はヘンリー・フォード2世を車に乗せたときのシーンです。あそこは凄く笑えるシーンなのですけど、同時に彼の思いもしっかりと理解できるように描かれていて、社長の人間としての奥行きが見える名シーンでした。

 

 また、本作はもちろん映画として出来も凄く良くて、シーン毎の人物配置とか画面の切り取り方とかマイルズとシェルビーの喧嘩や、レースのコース説明とかに表れてる演出の丁寧さとかもそうなのですが、とにかく素晴らしいと思ったのは「ほとんど本物を使っている」という点です。本作のレースシーンにおけるレース場や車は全て本物らしいのです。だから迫力がけた違いに凄い。CG全盛期なこのご時世に本物を使って撮影をすることで、CGでは出せない迫力を出しているのも素晴らしいなと思います。しかも「運転手目線」のシーンもあったりして、マイルズが見た世界を観客と共有できる作りなのもいい。

 

 以上のように、実際の本物を使った撮影、男2人の友情と、およそ現代的な映画ではなく、古臭い内容の映画ですが、しっかりした演出と演技の素晴らしさで本当に一級品の作品になっていたと思います。こういう映画は定期的に観たい。

 

 

 クリスチャン・ベール無双映画。

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 こっちもある意味「マン映画」。

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