暇人の感想日記

映画、アニメ、本などの感想をつらつらと書くブログです。更新は不定期です。

「学ぶことの楽しさ」を思い出させてくれる漫画「ほしとんで」の感想

今週のお題「好きな漫画」

 

 久々にはてなブログのお題に参加します。「好きな漫画」と言われれば、私もそれなりには漫画を読んできたし、今もそこそこは読んでいるので、そりゃたくさんありますよ。その中で、今回私が記事にしようと思うのは、「ほしとんで」という作品です。現在、月刊コミックジーンにて連載中で、作者は「ガイコツ書店員本田さん」の本田先生。私は本作の存在を愛聴しているラジオ、アフター6ジャンクションにて知りました。で、読んでみたらこれがものすごく面白かったので、現在も継続して読んでいる次第です。

 

ほしとんで01 (ジーンLINEコミックス)

ほしとんで01 (ジーンLINEコミックス)

 

 

 本作の主人公は、大学に入学したばかりの尾崎流星。彼のキャンパスライフを描きます。と書いて想像するのは、個性豊かな仲間と馬鹿やったり、恋愛したりといったものだと思います。しかし、本作はそんなものは描かない。確かに出てくるキャラは個性豊かですが、本作でメインとなるのは、「ゼミ」です。ゼミとは、少人数で特定の分野を教授と共に深く学んでいくアレです。ここで学ぶのは俳句。本作はゼミでの学びを中心にしてキャンパスライフを描くという、極めて真面目な漫画なのです。しかも俳句。

 

 本作の素晴らしい点は、作中のゼミ活動を通して、「学ぶことの楽しさ、豊かさ」が分かるという点です。本作は俳句ゼミですから、俳句について勉強をします。これは坂本十三講師の力量もあるわけですが、この授業がとてもいい。俳句について実践を通して丁寧に教えている。そしてそれに対して、主人公たちも自然な形で(時に突っ込みやボケの形で)質問をして、知識を深めていきます。歳時記とか初めて知りました。

 

合本俳句歳時記 第五版

合本俳句歳時記 第五版

 

 

 具体的には、例えば2巻の内容で、主人公たちは鎌倉を歩き、そこで感じたことを俳句にするという句会なるものをやります。ここが本当に素晴らしい。まず俳句を作るわけですから、ネタを探さなければなりません。そこで主人公たち俳句ゼミ一行は鎌倉を散策するわけですが、そこで彼ら彼女らは、俳句を通して世界を捉えて、普段とはまた違った視点で世の中を見、そして普段では気付かない「発見」をします。本作は、この瞬間をしっかりと捉えています。

 

 そして自分が感じたことを基に句を作成し、ゼミ生が自分が良いと思った俳句を選出、それを坂本十三講師が講評をするわけです。そこでのゼミ生の感想は作品の出来不出来を競うものではなく、「何故その俳句を良いと思ったのか」を述べるものです。そして坂本十三講師の講評は、「自分の俳句には何が足りなかったのか」を知るためのものです。これを読んで私は、「ゼミってこういうものだったよな」とか、「学ぶってこういう、自分に足りないものを知ったり、世の中を違う角度から捉えて、新たな気付きを得るものだったよな」と思い出しました。この点において、私は本作を、立派な「ゼミ漫画」だと思います。

 

 また、本作はゼミが主体なので、上述の展開のような面白さや、俳句の知識がつきます。しかし、それだけでは地味です。本作のもう1つの魅力は、魅力的なキャラクターです。本作の俳句ゼミの面子は個性派揃いです。流星は感情に乏しいサイボーグですし、友達になる春信はヲタっぽいノリを隠さない奴ですし、非常勤講師の坂本十三は、「機動警察パトレイバー」の後藤隊長似の昼行灯キャラ。このような魅力的なキャラクターがわちゃわちゃしている掛け合いを読むだけでも楽しめます。

 

 魅力的なキャラクターと共に、俳句の知識を身に付け、そして学ぶことの楽しさを思い出させてくれる本作。私はまごうことなく大学生の青春グラフィティだと思うし、だから本作は読んでいてとても楽しいのだと思います。