暇人の感想日記

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20周年にふさわしい「お祭り映画」【劇場版ONE PIECE STAMPEDE】感想

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80点

 

 

 現在、週刊少年ジャンプにて連載中の国民的海賊漫画「ONE PIECE」。原作は2019年現在、連載22年目に突入し、TVアニメも今年で20年目になります。私はTVアニメはエニエスロビー編で見るのを止めてしまったのですが、原作は相変わらず買ってますし、映画だって新作をやれば観ていますよ、そりゃ。そんな私なので、TVアニメ20周年にあたる記念的な作品である本作を観ない理由はないということで鑑賞しました。

 

 最初に書いてしまうと、本作は良くも悪くも「お祭り映画」です。内容は非常に単純です。強大な敵が出てきて、それをルフィがブッ飛ばすというものです。しかし、その中身は20周年にふさわしいものです。新キャラクターの数こそ少ないものの、その代わりにこれまでに出てきたキャラクターが総登場しています。また、劇中で歴代の印象的なBGMも多く使われており、これまでのTVアニメ20年分の歴史が詰まっているような内容です。

 

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 多くのキャラがいながらも、その多くがきちんと活躍しているのはさすがだなと。麦わら一味はもちろんですが、目立つところではバギーは相も変わらずの道化っぷりだし、ハンコックの暴走感とか、バルトロメオの安定感、噛ませが多かったスモーカーの久々の強キャラ感、サボ、ローの安定したカッコよさ、ラストの「あのキャラ」、そして脇に出てくる懐かしすぎるキャラ(ワポルとフォクシーが台詞ありで出るとは思わなかった)など、書き切れないレベルで多彩なキャラが出て、それなりの見せ場があります。このキャラが多いわちゃわちゃ感は新世界以後の原作の雰囲気に近いです。監督は『プリキュア』のオールスター映画を作った方なので、この交通整理力が買われたのでしょうね。

 

 また、多くのキャラが登場しているため、それまで実現していなかった対決や、対面があるのもポイント。クロコダイルとロビンはアラバスタ編以後は初対面だろうし(ミス・オールサンデーは久しぶりに聞いた)、サンジとスモーカー、ルッチ、そしてゾロと藤虎といったファンが見たい組み合わせが連続して出てきます。ここらへんは完全なファン・サービスです。

 

 そして、この20年分の歴史を以て迎え撃つ敵・バレットも、「ロジャー海賊団の元クルー」というこれ以上ない肩書を持つ強敵です。その強さは他を寄せ付けない圧倒的なもので、能力者ですが、悪魔の実の力を使わずとも覇気と体術だけで「最悪の世代」を圧倒する力を持っています。悪魔の実の力に頼りきりな敵キャラがいる中、己の力だけでここまで戦えるキャラというのは大変貴重で、魅力的です(だからゼットも好き)。

 

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 しかし、本作はキャラが出ていて、わちゃわちゃしてるだけではなく、その中身までしっかりと「ONE PIECE」な作品でした。

 

 「ONE PIECE」で重要なのは、「仲間」という要素です。本作では、ここをルフィとバレットという相反するキャラクターを通して描き出します。

 

 本作におけるバレットとは、その生い立ちから、1人で強くなることこそ重要であると考えているキャラです。その思想が前面に出ているのが彼の能力「ガシャガシャの実」。全ての力を自分に集中させ、己だけの力にするという能力です。この能力の前には、自分の力になれない者は、必要なく、必要なのは強者のみです。

 

 対して、ルフィはご存知の通り、「仲間」至上主義者であるため、それと真っ向から対立します。ここで重要になるのがウソップの存在。最初に予告でやられているシーンを観たときは「ゾロとかサンジの方が危機感あるのにな」と思っていたのですが、鑑賞してみると、なるほどと思いました。ウソップの「弱さ」が本作では重要な要素になっているのです。

 

 ウソップというキャラは、ご存知の通り麦わら一味の中では最弱の部類に入ります。そもそも彼は化け物じみた奴らばかり出てくる本作で、エニエスロビーまでずっとパチンコと頓智と口八丁と生命力で戦ってきた男なのです。そんな彼はルフィにとっては大切な仲間ですが、バレットの信念に沿えば、ウソップは「いらない」人間で、真っ先に切り捨てられます。

 

 

 しかし、ルフィは見捨てない。単純な「強さ」では相手を推し量らず、誰でも受け入れる。そしてその差が、最後で逆転をもたらすのです。

 

 そしてルフィは、そのカリスマ性を以て、最後に互いに相反する勢力を味方につけ、彼らの力を借りることでバレットに勝利を収めます。これは、上述のバレットの信念、能力とは正反対の考えであり、それ故に、この考えを持ったルフィたちが勝利を収めることは、「仲間」の大切さを訴えてきた「ONE PIECE」という作品そのものと言え、記念作としてふさわしい内容だと思います。

 

 全体的には満足だったのですけど、実は不満点が1つ。バトルシーンです。本作は昨年公開された同じく東映アニメーション制作の『ドラゴンボール超 ブロリー』よろしく半分以上がバトルです。これ事態は良いです。しかし、『ブロリー』と比べてしまうとバトルシーンがやや平凡な感じがしてしまいました。あれと比べるのが酷だというのは分かるのですが、70分バトルをやるなら、あれくらいエクストリームなものが観たかったなぁと思う次第です。

 

 ただ、私は本作を「ONE PIECE」TVアニメ20周年記念のお祭り映画として、そして「ONE PIECE」の映画として、楽しめました。

 

 

同じく東映アニメーション作品。こっちのバトルシーンは群を抜いて素晴らしかった。

inosuken.hatenablog.com

 

 同じくジャンプ映画。こっちもお祭り感ありました。

inosuken.hatenablog.com