暇人の感想日記

映画、アニメ、本などの感想をつらつらと書くブログです。更新は不定期です。

戦争モノ×ゾンビが生んだ悪魔合体作品【オーヴァーロード】感想

f:id:inosuken:20190530224249j:plain

 

78点

 

 

 実は私、本作に関しては油断してました。映画秘宝を読んで存在は知っていたのですが、公開日までは気を払っていなかったため、公開初週に観る時間があったにも関わらず、鑑賞しなかったのです。なので、2週目で慌てて鑑賞しました。

 

 戦争ものとゾンビを掛け合わせるという、設定を聞くだけでB級感がありますが、本作は制作費もB級。つまり、本作は真のB級映画な訳ですが、実際に鑑賞してみると、これが中々面白く、思いがけない良作でした。

 

 

 本作は、戦争ものとして、パラシュート降下作戦から始まります。まずここでの臨場感が半端ではありません。大音量で鳴るヘリのプロペラの音と、敵の爆撃音が休みなく続き、攻撃されたときのパニックや、パラシュートの降下を近くで撮って、降下する一部始終を「体験」させる下りは本当に恐ろしいものでした。本作はここで、観客を一気に映画の中に引きずり込みます。降下した後も隣で喋っていた奴が突然地雷で吹っ飛んだり、敵の強襲に遭ったり、片時も気を抜けない展開が続きます。このように、序盤は完全に戦争ものになっています。

 

 しかし、村である家に匿われてからジャンルはホラーになります。ここでも振り向き様の恐怖演出とか、観客の不意を上手くついたビックリ演出とか、中々のものを見せてくれます。ここは伏線を張るシーンなのですが、この恐怖演出のおかげで、全く中だるみを感じません。

 

 その後も、潜入作戦や拷問により、じわじわと謎が明らかにされていき、全てが判明した後半から、本作は遂にゾンビものになります。ここからは恐怖もひったくれもなく、作戦遂行のために立ちはだかるゾンビどもと人間の死闘が始まるのです。まぁ、予算の都合か、2体だけですけど。ただ、1体1体との戦闘をしっかり見せてくれるので、満足度は高いです。

 

 このゾンビとの対決の何が良いかというと、「ちゃんとバカっぽいところ」です。普通にシネコンでかかる映画で、「血清を2本打ったスーパーゾンビと戦う」など、実に中学生的発想で、単純に観てて楽しい。しかもラストは同じくゾンビになった味方がタイマンをはるという、お約束を裏切らない作りも嫌いじゃないです。

 

映画秘宝 2019年 07 月号 [雑誌]

映画秘宝 2019年 07 月号 [雑誌]

 

 

 このように、本作は、映画の中でジャンルを横断している訳ですが、実のところ、全体としては「戦争もの」として1本筋が通っています。全体の目的は「塔を破壊せよ」ですし、お決まりの良いシーンもありますし、いがみ合っていた奴らが友情を育む話もあります。この筋によって、本作はただの詰め合わせな映画ではなくなっていると思います。

 

 また、本作を観て面白いと感じた点は、因果応報についてです。よく観ていると、本作では、暴力を振るった人間は、それとほぼ同等のしっぺ返しを食らっているのです。ナチスの将校を拷問した人はひどい目に遭うし、そもそもそのナチスの将校も前のシーンでかなりえげつないことをやろうとしましたし、恐らくやっていたのでしょう。実験を行っていた人間もだいたい死にます。なので、人間に対しては非暴力を通した主人公が最後まで生き残るのは道理だと思います。

 

 このように、本作は、多くのジャンルを横断している作品ですが、戦争ものとして筋が通っており、また、1つ1つのクオリティが中々高いことで、破綻せずまとまっている作品でした。良作。

 

 戦争ものの映画です。サム・ペキンパー節も炸裂。

inosuken.hatenablog.com

 

 ゾンビものの傑作。

inosuken.hatenablog.com