暇人の感想日記

映画、アニメ、本などの感想をつらつらと書くブログです。更新は不定期です。

戦争が生んだヒーロー【アイアンマン】感想

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82点

 

はじめに

 この記事は、2017年に他のレビューサイトにアップしたものに加筆・修正したものになります。『アベンジャーズ/エンドゲーム』の公開に合わせ、このブログに掲載していなかった作品もアップしようと思い、今回、この記事をアップします。

 

感想

 MCU作品第1作。今作の成功がなければMCUはアメコミ映画を現在まで作っていなかったでしょう。そしてMCUの成功がなければ今のアメコミ映画ブームは無かったでしょうし、そういう意味では映画の歴史を変えた作品と言えなくもない作品だと思っています。

 

 感想として、カラッと楽しめるとてもいい娯楽作で、観ていて非常に楽しかったです。しかし、ただ楽しいだけではなく、現代のアメリカが抱えている矛盾にもスポットが当たっている良作でした。

 

 何故今作が面白いのか。それはやはり、主人公、トニー・スタークの魅力が半端じゃないからだと思います。そして、彼を完璧に演じているロバート・ダウニーJrの演技が素晴らしいです。当時はあり得ない人選だったらしいですが、今考えてみれば、彼ほどトニーを演じられる人はいなかったと思います。それは、彼の経歴が俳優版「トニー・スターク」だからでしょう。完璧にマッチしています。

 

 今作では半分近くがヒーローになるまで、所謂「オリジン」パートですが、全く飽きません。それは、テンポが良いのもありますが、やはり、アーマーを作る試行錯誤が観ていて面白いからでしょう。トライ&エラーを繰り返しながら自分が考えた最強のアーマーを作っていく過程は観ていてワクワクします。

 

 また、トニーの心境の変化も見どころ。それまで傲慢だった彼が一度「死に」、新たな心臓を得ることで「生まれかわ」った彼が、最後に立ち上がるために「心」が入った心臓を入れる。あそこで、彼は生まれ変われたと思います。

 

 そして、試行錯誤を繰り返した末に完成したアーマーを使ってヒーロー的活動を行う瞬間はやっぱりカタルシスがあります。

 

 ここまでだとただのヒーロー映画ですが、含んでいるテーマは結構シリアスです。所謂「力で力を抑える」ことの矛盾です。本作ではアイアンマンそのものが矛盾を体現していると思いました。

 

 トニー・スタークは自身の兵器が敵にわたって人を殺すのに加担している現状を見て、兵器の殲滅のためにアイアンマンスーツを作りますが、これが矛盾そのものの体現だと思います。つまり、強力な武器が強力な武器を呼ぶのです。

 

 では武器を持たなければいいのか。と言えばそうでもなく、現状、武器を「殲滅」するためにはアイアンマンのような強力な兵器が要ります。平和的に解決できれば一番ですが、本作のように武器を輸出して利益を出している者と、それを必要としている機関がある限り終わりはないでしょう。日本も原則武器輸出解禁したし。そして、敵もトニーが作った試作機から強力な兵器を作ります。

 

 つまり、私はここに強い兵器を作れば作るほどより強力な兵器が生まれるという泥沼が体現されていると感じるのです。この姿は、アメリカそのものを思わせます。

 

 ヒーローものでこういうことをやると、ヒーローの存在そのものが矛盾してしまいますが、今作では、トニーが正義感からではなく、責任感からヒーローをすることで、上手く緩和できてたような気がします。ヒーロー映画で国の問題も体現した今作。ヒーロー映画としても、1つの映画としても面白かったです。

 

 

続篇。こっちは微妙だったなぁ。

inosuken.hatenablog.com

 

 3部作最終作。こっちは、アイアンマンをスタークが内面化する話だったと思います。

inosuken.hatenablog.com