暇人の感想日記

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映画愛溢れる「粗悪な物語」【パルプ・フィクション】感想

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94点

 

 

 クエンティン・タランティーノが監督としてブレイクするきっかけとなった本作。私は本作を以前に鑑賞しており、今回は新午前十時の映画祭9で取り上げられ、映画館で観られるという事で鑑賞しました。

 

 鑑賞してみて、とても楽しい時間を過ごすことができました。平成ももう終わるというこの時期に、『パルプ・フィクション』のタイトル通りの下らなく、場末の映画館でかかってそうな内容の本作を、自分の近所のシネコンで観ることができたからです。しかし、下らないだけではなく、タランティーノの映画への偏愛と遊び心が存分に詰まってもいて、そこも楽しい要素でした。

 

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 タランティーノ映画を語るうえで外せないのが異様に多い無駄話。登場人物は常に何かどうでもいいことをくっちゃべっていて、しかもそれらは全体のストーリーと何の関係も無いことがほとんど。まぁそれが面白いのですが、本作でもそれが炸裂しています。

 

 さらにこの無駄話に加えて、展開にも無駄なものが多いし、下らない。中盤のヴィンセントが、麻薬のやりすぎで昇天したミアを見て大慌てで売人のところへ行って助けを乞うシーンなどは本当に下らなく、最高に笑えるシーンです。ミアの蘇生シーンなんて完全にギャグですよ。

 

 しかし、下らないのは表面的で、演出はかなり計算されていて、とてもいい。中盤のヴィンセントとミアが躍り出すシーンとかはその過程の描き方とかメチャクチャ良いし、序盤のサミュエル・L ・ジャクソンはえらい緊張感です。そういった演出をしておきながら、上述のギャグもやってしまう点にも本作の面白味を感じました。しかも最終的に因果応報の話になって、その輪廻から抜け出そうとする奴の話になる点も面白いですね。

 

 下らない内容の本作ですが、映画の中の時系列はシャッフルされており、あっちにいったりこっちにいったりします。ここはタランティーノの遊び心だと思うのですが、これでいくつかの下らない話(パルプ・フィクション)を織り交ぜて映画を作っている感じが出ていると思います。そしてそこで繰り広げられるのは例外なく下らない内容の悲喜劇。しかし、本編のそこかしこに古今東西の映画ネタが仕込まれているらしいのです。「らしい」と書いたのは私にはわからなかったからです。後で解説を調べてみたら、中盤のヴィンセントとミアのダンスは『81/2』からの引用らしいですし、マリリン・モンローが出てきたかと思ったらあれはモンローのパチモンらしいし、終盤のブルース・ウィリスは『柳生一族の陰謀』らしいし、おそらく劇中に流れている作品も過去の何かしらの作品だったのでしょうね。おそらく、本当はこの何十倍もの引用があるのでしょう。

 

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 ただ、「下らない内容に、映画のネタが隠れている」点、私はこれが非常に良いなぁと思いました。これによって、「本当に映画が好きで好きで仕方がない人間が大真面目に遊んで作った」感が出ていると思うからです。誰かがタランティーノのことを「血液の代わりにフィルムが流れている」と評していましたが、本作は粗悪な物語の中にありとあらゆる映画が引用されています。過去の映画の引用ばっかりして新しい映画を作っているという点で、映画全てを肯定したように感じました。いや、観てよかった。

 

 

ブルース・ウィリス主演のビジランテもの。

inosuken.hatenablog.com

 

 こっちも上げときますね。監督の同類感が凄いので。

inosuken.hatenablog.com