暇人の感想日記

映画、アニメ、本などの感想をつらつらと書くブログです。更新は不定期です。

現代に上手くアップデートされたリメイク作【アリー/スター誕生】感想

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80点

 

 

 1937年に公開された『スタァ誕生』の3度目のリメイク。本作は前作にあたる1976年の『スター誕生』のように音楽業界を舞台にしています。私は過去3作は未見です。鑑賞理由は単純で、話題だったからです。後、ブラッドリー・クーパーの監督としての腕がどれほどのものか気になったのも理由です。ちなみに、2018年最後に映画館で観た映画でした。

 

スター誕生 [Blu-ray]

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 鑑賞して誰もが感じるであろうことは、ブラッドリー・クーパーの監督としての腕です。ライブシーンの臨場感とか、何てことない2人の演出とか、ストーリーの組み立てと感情のコントロールの仕方とかがメチャクチャ上手いのです。本当にこれが初監督なのかと疑うレベルです。これはマジで上手くいけばクリント・イーストウッドを継げるかもしれません。

 

 中でも最も適切な演出だなぁと感じたのがカメラワーク。観て誰もが感じたと思うのですが、とにかくカメラが2人に近いのです。これによってこの映画の世界そのものがこの2人に集中され、「この2人だけの世界」が作られます。本作はこの2人の話であるため、その他の要素を排するこの演出は実に的確だなぁと思いました。要は形を変えた『ラ・ラ・ランド』ですね。

 

ラ・ラ・ランド-オリジナル・サウンドトラック

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 ストーリーも、少しテンポが良すぎだと思いましたが、良いと思いましたよ。ちゃんと2人の気持ちが通じ合って、交わって、お互いにとって幸せの絶頂にいる瞬間を「Shallow」を使って非常にエモくしています。また、逆に気持ちが通じなくなって、どんどん墜ちていく過程を丁寧に描き、そのどん底グラミー賞というアリーにとって最大の晴れの舞台で出すなども上手いなぁと。しかもこのどん底はジャックにとってのどん底でもあるため、このシンクロのさせ方には舌を巻きました。また、劇中で歌われる歌も、歌詞が内容とリンクしたものなので、作品を盛り上げてくれます。

 

 役者陣も素晴らしかったです。ブラッドリー・クーパーはいつも通り芸達者ぶりでしたが、本作ではそれが際立って出ていたと思います。しかし、レディー・ガガに関しては、まさかあそこまで上手いとは思っていませんでした。おそらくブラッドリー・クーパーの手助けもあったと思いますが、にしてもあの上手さは異常。ただ、レディー・ガガに関しては、作中のアリーに起こったこととほぼ同じことが彼女に起こっていたらしいので、半分は素のままなのかもしれませんが。だから実話と勘違いする人がいるのも分かる気がします。

 

 ラストも良くて、アリーがジャックへの歌を歌っていて、突如ジャックのシーンが挟まれることで、歌の真の意味が浮かび上がり、同時に感動できる。あれは反則級だと思いますよ。そして映画はアリーの顔のアップで終わります。私はここで、ジャックとの死別を乗り越え、「アリー」という1人のスターが誕生したと感じました。総じて良作だと思います。