暇人の感想日記

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驚異的なテクニックで描かれる群像劇【ブギーナイツ】感想

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88点

 

 

 今なお第1線を走り続けている天才監督ポール・トーマス・アンダーソン。彼の覇道が始まった記念すべきデビュー作。遂に鑑賞しました。

 

 「天才監督」と言われるポール・トーマス・アンダーソンですが、デビュー作からその才能を爆発させています。ストーリー、演出、カメラワーク等、どれをとっても「ベテラン監督が撮ったのか?」と思えるくらい、本作はデビュー作とは思えないほどのクオリティを持つ作品なのです。

 

 まずストーリー。本作はよくこう例えられます。「ポルノ映画界の『アラビアのロレンス』」と。大筋は人並み外れたイチモツを持つ主人公が、それを以てポルノ映画界で成功してくというよくあるもの。しかし、本作は『アラビアのロレンス』がオスマン帝国からのアラブ独立闘争の歴史をロレンスという1人の人間の視点から描いたように、本作はポルノ映画界の栄枯盛衰の歴史を主人公・エディを始めとしたキャラたちを通して描いているのです。規模が違うからこそ、同じことをしていることに感心します。すげえ。

 

 また、このキャラクター達もみんな魅力的で、かつ今の大物スターばかり。マーク・ウォールバーグドン・チードルフィリップ・シーモア・ホフマンジュリアン・ムーアウィリアム・H・メイシー等が平然と出ています。彼らの野望や恋愛などの気持ちがぶつかり合りあい、和解していくさまは、さながら青春映画です。

 

 本作は、このような魅力的なキャラ、ストーリーを、驚異的なカメラワークと演出で見せていきます。特に冒頭からブッ飛ばされます。『黒い罠』の冒頭の驚異的な長回しと『ゴッドファーザー』の登場人物紹介を同時にやるという離れ業を見せてくれます。他にも、水中に飛び込んでそのまま撮影したり、かと思ったらデ・パルマ映画のような場面分割を駆使した編集テクニックを見せてくれたりと、それまでの映画作品のテクニックが監督なりのアレンジで入っているのです。これは舌を巻きっぱなしでした。

 

 このように、本作はやっていることはB級ポルノ映画界の話ですが、中身は驚異的なテクニックと魅力的なキャラクターが織りなす群像劇としての面白さが詰まった素晴らしい作品でした。

 

 

ポール・トーマス・アンダーソンの最新作。こちらもとんでもない作品でした。

inosuken.hatenablog.com

 

映画界を舞台にした同じような作品。

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