暇人の感想日記

映画、アニメ、本などの感想をつらつらと書くブログです。更新は不定期です。

2018年秋アニメ感想②【SSSS.GRIDMAN】

 あけましておめでとうございます。昨年は当ブログを読んでくださってありがとうございました。今年も頑張って更新していきますので、読んでいただけたら幸いです。さて、新年一発目の記事はこちらです。

 

 

 

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 1993年の4月から1994年の1月まで放送されていた『電光超人グリッドマン』を原作とする完全新作アニメーション作品。私はこの原作のことは全く知らず、当然見たこともありません。それでも見ようと思ったのは、スタッフと制作会社。制作はGAINAXの系譜をひくTRIGGERで、監督は『天元突破グレンラガン』でメカ作監を務め、『キルラキル』等にも参加している雨宮哲。そして、脚本には『ウルトラシリーズ』『仮面ライダーシリーズ』の参加歴を持つ長谷川圭一、怪獣デザインに西川伸司、ヒロイック作画チーフに牟田口裕基を起用するなど、尋常ではない気合の入り方を感じました。そんなわけで、原作について事前に少し調べたりAmazon Primeで無料で視聴可能な原作を1話だけ見たりして、期待していました。

 

 

 実際に見てみると、期待以上の素晴らしい作品となっていました。アニメと特撮の良いとこ取りをした戦闘シーン、原作をリスペクトした設定にもやられましたが、何より素晴らしいと感じたのが、原作について調べてみると、本作が『電光超人グリッドマン』のアニメ化である意味がきちんとある作品になっている点です。

 

 まず、本作の素晴らしいのは特撮とアニメーションの融合が上手い点。まず、特撮ですが、戦闘シーンを見ると、アニメーションでよくある感じではなく、動きが基本的に「特撮的」なのです。例えば、怪獣の動きにしても着ぐるみのような重量感のある動きですし、グリッドマンの動きも3DCGを使っているにもかかわらず、まるで人間が演じているようなもののそれです。また、画面的にも特撮的なシーンがいくつもあります。例えば、電柱です。日常でも何度も印象的に出てきますが、戦闘シーンではグリッドマンと怪獣が戦っているときに衝撃で揺れるなど、特撮的な画作りに貢献しています。また、グリッドマンの登場のときの重量感とか、グリッドマンと怪獣が向かい合っているのを引いた画面で撮ったシーンとかも実に特撮的でした。

 

 ここまで特撮へのリスペクトに溢れる作品ですが、本作はこれにアニメ的な要素を加えています。上述したように、グリッドマンの戦闘中の動きは人間が中に入っているかのようなものですが、グリッドマンの合体シーン、オーバーパースを使ったシーン、現実ではありえない跳躍等、度々アニメ的なケレン味溢れる動きが入ります。このアニメと特撮が上手く融合し、作中の戦闘シーンはかなり見応えのあるものになっています。

 

 このように、戦闘シーンだけ見てもアニメと特撮の融合ぶりが素晴らしいのですが、それ以上に、本作は『電光超人グリッドマン』という作品とアニメの融合がとても上手い作品なのです。

 

 原作は当時そこまで普及していなかったコンピューターの世界を舞台とし、そこで武史が創った怪獣が暴れることでプログラムが破壊され、現実に被害が及ぶ、といったものでした。そこで主人公がグリッドマンとしてコンピューター世界に実体化し、怪獣を倒して騒動を収めます。本作はこの設定を「現実」と「アニメ」に置き換えているのです。それが判明するのは最終話の本当に最後なのですが、これを知ったとき、私はいたく感心しました。

 

 『電光超人グリッドマン』においてコンピューター世界だった仮想世界は、本作においてはアニメそのものになりました。それは新庄アカネが作り出した世界。彼女はその世界に閉じこもり、自分の良いように作り変えて自由に生きています。これは普段からアニメとか映画とか観て現実逃避している自分からすれば笑えない話なのですが、本作はアカネがこの世界から旅立ち、(おそらく)一歩前に進む話なのだと思います。

 

 ここまで考えて、私が思い出した作品が1つあります。『うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー』です。あれも「文化祭前日」を延々繰り返しているラムを夢から醒ませ、「楽しい日々が終わる」という現実と向き合わせる作品でした。そしてそれは我々自身にも返ってきて、「アニメばっか見てんじゃない。現実見ろ」と監督に言われているような気分になりました。

 

 

 本作はこの作品ほどではないにしても、非常にメタな作品だと思います。あかねのキャラは社会性のない人間そのままです。だから自分の気持ちのいい世界へ逃げ続ける。ただ、フィクションは人を救うこともある。アカネは籠ってたけど、そこで答えを見つけて一歩進むと決意した。そう解釈しても良いんですかね。だからグリッドマンと彼らの別れがそのまま我々視聴者とこの作品との別れとダブって、何だか切なくなるんですよね。「もうこれを見る時期は終わった」みたいな感じがして。そして何よりエンディングの「youthful beautiful」がよりそれを助長させるんですよね。立花とのありえたかもしれない関係が描かれてるから。

 

youthful beautiful(通常盤)(CD only)

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 「現実」と「アニメ」。この2つを使い、1人の特撮ファンの少女の心を救ってみせる。このような構造は、『電光超人グリッドマン』の設定だからこそできたことだと思います。この点で、本作は『電光超人グリッドマン』のアニメ作品として、最適解な作品なのかなと思います。