暇人の感想日記

映画、アニメ、本などの感想をつらつらと書くブログです。更新は不定期です。

2018年夏アニメ感想⑦【はねバド!】

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 バドミントンを扱ったスポーツアニメ。当初は視聴する気が全くなかったのですが、Twitterのタイムラインに1話の試合シーンのGIF画像が流れてきましてね。目を見張りました。急いでAmazon Primeで1話を視聴してみたところ、試合シーンはもちろんですが、それ以外も相当面白い。遅ればせながら視聴決定した次第です。

 

 本作は講談社から出版されている雑誌good!アフタヌーンに掲載されている漫画「はねバド!」をアニメ化したものになります。私は原作未読ですが、アニメ化した本作は他のスポーツアニメとは違う魅力があり、とても面白かったです。

 

 本作の特筆すべき点は、やはり試合シーン。近年は「黒子のバスケ」以降、過去のスポーツアニメからは考えられないくらい試合中に躍動感をもって「動く」作品が増えてきました。私が見ている範囲では、今期だと「風が強く吹いている」が該当します。本作も大変よく動いています。本作では縦横無尽に動きまくるキャラクターもそうですが、手首の動きとか、次の動きまで置く一呼吸とか、ちょっとした筋肉の動きまで表現しています。そしてさらにそれを撮るカメラワークも見事で、やや引いた視点やで撮ったり、かと思ったら寄ったりダイナミックに動いたりします。これだけで見ていられるレベルです。

 

 肝心のストーリーも他のスポーツアニメとは違っています。この手のアニメでよくあるのは、それまで何の取り柄もなかった主人公がひょんなことから部活に入り、才能を開花させ、活躍するというものです。

 

 しかし、本作で描かれるのはそこではなく、「1人1人が何故、バドミントンをやるのか」です。主人公は羽崎綾乃と荒垣なぎさの2人です。

 

 なぎさは王道の主人公です。中学時代の綾乃との試合でグレてしまうのですが、かなり早い段階で立ち直り、「バドミントンが好き」という気持ちを取り戻します。それ以降は他の部員たちと信頼し合い、自らの努力で勝利を掴み取っていきます。本作は彼女のトラウマ(=綾乃)を克服する話でもあります。

 

 対する綾乃は真性の天才。バドミントン女子シングルス全日本総合優勝10連覇を成し遂げた母を持ち、自身も身体的にバドミントンに恵まれているという、週刊少年ジャンプ的主人公です。本作の真の主人公でもあります。

 

 ただ、見続けると、この綾乃というキャラクターは、どんどん変貌していきます。ストーリーが進むにつれて、成長していくなぎさとは対照的に人間味が無くなり、対戦相手に対する敬意すら欠いた冷徹な存在となっていきます。ぶっちゃけラスボス。

 

 何故このようになるのかと言えば、彼女の母親が原因。母親に褒められたくてバドミントンをやっていたのに、突然いなくなり、向こうで別の選手のコーチになっていたのを知ったことで、「捨てられる」ことへの強い恐怖があるのです。だから彼女は「勝たなければならない」と思い、冷徹な性格となっていくのです。しかし、それによってどんどん孤独になっていきます。

 

 この流れと並行して語られるのが「才能がない」人たちです。1人1人丁寧に描かれているので、見ていると胸が締め付けられる思いでしたよ。

 

 本作の上手い点は、この「何故それをやるのか」と「主人公の成長」という2つの流れが最終的に綺麗に結実するという点です。それが12話だったと思います。これまで描いてきた綾乃が背負ってきた気持ちと軌跡を見せたあの演出は本当に素晴らしくて、一気に綾乃に感情移入させられました。

 

 そして、2人の成長も、なぎさは全力で過去のトラウマに打ち勝ち、綾乃は負けたにも拘らず、母と一緒には行かず、チームに残ることを決めます。彼女たちの「スタート地点」が定まったのです。余談ですが、こう考えると、コニーはいち早く成長したのでしょうね。

 

 このように、本作は試合だけではなく、キャラクターのドラマもしっかりと描き切った作品でした。個人的には良作。見てよかったです。