95点
スタンリー・キューブリックとアーサー・C・クラークが1968年に制作した不朽の名作にして、映画史上最も難解と言われる作品。私も昔DVDで観たのですが、御多分に漏れずさっぱり理解できず、当時の感想ノートにも、「訳分からん」と書かれています。しかし、年月が経ち、私も当時よりかは映画の知識もつき、何より町山智浩さんの名著「映画の見方がわかる本」や、小説版も少し読んだので内容もある程度理解できています。
映画の見方がわかる本―『2001年宇宙の旅』から『未知との遭遇』まで (映画秘宝COLLECTION)
- 作者: 町山智浩
- 出版社/メーカー: 洋泉社
- 発売日: 2002/08
- メディア: 単行本
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そのような状態で発表されたIMAX版の公開。70mm版のチケットが取れなかったため、その腹いせも兼ねて鑑賞しました。
最初に観た時とは打って変わって、大変感動しました。内容は映画の中だけではさっぱりなのですが、本作に注ぎ込まれた技術力、そしてIMAXだからこそ体験できる臨場感溢れる映像体験、さらに序曲、休憩、終曲という昔ながらの上映形式といった体験そのものに感動しました。
まず、IMAXで観て確信したことが、本作は家の小さいTVで観るのではなく、出来るだけでかいスクリーンで観るために作られた、「体感型」作品だということです。それもそのはずで、本作は元々シネラマ形式で上映されており、作りじたいもシネラマを最大限に生かすようになっているのです。今ではもうシネラマは観られないのですが、IMAXは今の環境では最もシネラマに近いため、本来の感動を味わえます。具体的にシーンを挙げると、最初の「ツァラトゥストラはかく語りき」には本当に感動しましたし、後は何回か出てくる主観ショットや、冒頭の広大な風景をバチっと映した画面、そして何より終盤のスターゲイトです。以前観た時は何が何やらだったのですが、IMAXで大きい画面いっぱいに観ると、ボーマン船長の体験をそのまま経験できるのです。
次に、撮影技術について。本作が制作されたのは1968年です。なので、当然CGはありません。なので、劇中の宇宙描写は、人間が手作りして、若しくは撮影テクニックを駆使しているのです。それを考えるだけでも楽しかったです。それが気になって調べたのですが、無重力を表現するためにカメラを置く位置を工夫したり、実物大のセットを作ったりと異様な努力が伺えました。
映画とは、画面の中に「嘘」を作り出すことです。最近はCGでそれは大分楽になりましたが、昔はテクニックが全てでした。そこに人間の工夫が垣間見えます。だからこんなに感動するのだと思います。
さて、肝心の内容ですが、映画を観ただけではさっぱりです。これはキューブリック自身が脚本にあったナレーションを抜いたからだというのは有名な話です。ただ、それも本作を「体感型」にするために必要なことだったのだと思います。
しかし、内容はもちろんあります。それは人類の進化の話です。月に辿り着けるほどの科学力を身に付けた人類が、HAL9000という「人間に近い存在」との対立を経て、モノリス(=神?)と会い、より高次の存在「スターチャイルド」になる、というもの。「メイキング・オブ・2001年宇宙の旅」によれば、本作には元々本編前に物理学や宗教の教祖といった有識者たちから得たインタビューが入る予定だったとのこと。それは「地球外生命体はいるか、機械が人間を乗り越えることはあるのか」といった内容でした。これがあれば一発で分かったのだろうなぁ。
このように、本作はIMAXで観る価値がある作品でした。本当に観てよかった。
- 作者: ジェロームアジェル,Jerome Agel,富永和子
- 出版社/メーカー: ソニーマガジンズ
- 発売日: 1998/03
- メディア: 単行本
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