暇人の感想日記

映画、アニメ、本などの感想をつらつらと書くブログです。更新は不定期です。

ゲーム版『トイ・ストーリー』【シュガー・ラッシュ】感想

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82点

 

 

 

 12月に続篇が公開されるということで、予習として鑑賞。観終わってすぐは「いやぁ、良いもん観たなぁ」という幸福感に包まれているのですが、しばらく経ってよくよく考えてみると、おかしな点や、納得がいかない点も多くあった作品でした。

 

 監督は2016年に公開された大傑作映画『ズートピア』のリッチ・ムーア。本作が制作されたのは『ズートピア』より4年前ですが、『ズートピア』を思わせる要素がここから既に見えています。

 

 まず、本作の基本的な設定。主人公はレトロゲームで長年悪役を務めていたラルフ。彼は「悪役」ということで、ゲームのキャラからも距離を置かれています。彼が何をしたわけでもないのに。彼はそれが悲しくてメダルを獲得しようと今回の騒動を起こしてしまいます。この「特定の人に対する偏見」は『ズートピア』で肉食と草食というテーマでより濃く出てきます。ただ、本作に限って言えばこの要素は騒動のきっかけでしかなく、主要なテーマ的には『トイ・ストーリー』から続くピクサー的な「あるべき自分」に収まるまでの話だったと思います。これはディズニーなのに、何故ピクサー的なテーマなのかと思っていたのですが、調べてみると『ボルト』からジョン・ラセターが参加していたのですね。なるほど。

 

 そんなラルフが出会うのはシュガー・ラッシュというゲームにいるヴァネロペ。日本版吹き替えの諸星すみれさんの演技も相まって大変可愛いのですが、何故かゲーム内では厄介者扱いで、かなりえげつないいじめを受けます。そんな彼女と「嫌われ者」からの脱却を図ろうとするラルフが心を通わせる様子を描きます。ラストで、これまで壊すだけだったラルフが、「ヴァネロペのヒーロー」としてゲームの世界を救う姿は観ていて大変感動します。最後にはヴァネロペのいじめっ子への「シンデレラ」的な仕返しもあり、ここは溜飲が下がります。

 

 次に、語り口の鮮やかさも健在。ラルフのモノローグから始まり、ラルフが参加しているレトロゲーム風の画面から、ラルフたちが生きているゲームの世界が映されていきます。観ていてとても面白いし、世界観やルールの説明になっているので無駄が無い。ここから分かるゲームの世界は、現実の出来事を上手くゲーム内の世界に落とし込んでいます。この辺はさすがです。

 

 例えば、各世代のゲームキャラの動かし方。ドット絵と現在のCGの絵など、世代ごとに分けています。また、レトロなクラッキングゲームと最新のゲームの内容から来るギャップをギャグとして描いているのも面白いですね。このように、本作は、さながらゲーム版『トイ・ストーリー』です。

 

 このように、本作はゲームを基にした独特かつ楽しい世界観、世代ごとのゲームキャラクターの動きの再現、そしてテンポのいいストーリーと、そこから来る感動のラストといったエンタメ作品として必要な要素が詰まった作品です。なので、観終わった後はとてもいい気分になれます。ですが、冒頭にも書いたように、よくよく考えるとおかしな点もあることも事実なのです。

 

 その最たるものはラルフのゲームの奴らですよ。ラルフがどんな奴かも知らないくせに、偏見で30年間もゴミ捨て場に寝かせていたのです。いくら偏見があると言っても30年もこの状態が続いていたのは変な気がします。フェリックスは比較的良い奴でしたけど、ラルフが悪役に嫌気がさしていたことに気付かずにラルフを責め、あまつさえラルフに知らせずにパーティをしているのです。やっぱり分かってないのです。お前ら、そういうところだぞ、と。そのくせ、最後の「和解」はすんなりといくのです。この点も釈然としない。後、ヴァネロペも事件が終わってからもあのチート能力を持っているとかはどうなんだろうとかも思いましたね。

 

 このように、釈然としない点も結構あります。ですが、設定とかアニメーションのクオリティはさすがの一言なので、総合的には楽しめました。