90点
2016年に公開され、大ヒットした『デッドプール』の続篇。前作は「型破りヒーロー」を謳い、メタ発言、パロディ、下ネタ、グロ何でもありな非常に自由な作品でした。ですが、前作はそれらの要素が絶妙なバランスで配され、結果、MCUもびっくりの完成度を誇るヒーロー・オリジン映画となっていました。本作がヒーロー映画に与えた影響は大きく、『LOGAN』はこの作品にインスパイアされたことは有名です。
しかし、本作では前作のバランスは何処へやら。上述のギャグを大幅に増加させ、代わりにストーリーがデッドプールの突っ込み通りご都合主義の穴だらけ脚本となるという、非常にアンバランスな映画になりました。しかし、このアンバランスさは表面的なもので、その中身は前作並みに至極真っ当な主張、デッドプールのキャラの掘り下げ、そしてそれらを包括してヒーロー映画の続篇の鉄板「ヒーローの存在意義」をきちんと語るという、よく観てみると実は大変完成度の高い映画となっていました。
このように考えると、アンバランスな構成になったのも納得がいきます。何故なら、これこそが、デッドプール自身の「型破り」ぶりを体現したものだからです。しかも、少しズルいのはデッドプール自身に突っ込みを入れさせることで脚本の穴を観客に無理やり呑み込ませている点。これはデッドプールならではでしょう。
また、デッドプールが自身の「ヒーロー論」を体現していく過程もとても面白いです。彼は大切な人を亡くし、自暴自棄から自殺願望に憑りつかれますが、少年を助けることで生きることに目覚めていきます。そこから、彼は今、ヒーローになるために考えるのです。彼は言います。「X-MENはマイノリティの象徴」だと。確かに、最初はそうでした。ですが、時代は変わりました。マイノリティの象徴だったX-MENはイケメンばかりで、しかもMEN!女性もいるのに・・・。そこで彼は思います。これはどういうことだ、と。そこで彼はシリーズを10年続けるために「無いなら作ればいい」精神で最強鬼ヤバチーム・Xフォースを結成します。初陣は腹が捩れるくらい笑いました。そして最後に残ったメンバーはデッドプールを始めとし、はみ出し者ばかり。そう、彼は「今のヒーロー」になるために、どんな人間でも受け入れるという、多様性を体現したのです。しかも、この「真面目さ」もデッドプールが言うから全く偽善的に聞こえないという完璧さ。
そして、これは前作の彼の軌跡からきちんと繋がっています。前作は、全てを失った彼が愛する人のために戦い、愛を成就させる物語でした。そして本作で、「家族」を手に入れます。孤独だった彼は、遂に多くの仲間を得たのです。これに関連して、メダルの使い方がとても上手かったなと。
これだけでも泣かせる話ですが、ラストのTake on meのシーンは本当に秀逸。有名なPVを基にしたものですが、ウェイドが「あちら側」に行って顔が元に戻ったところ。あれで泣きました。「あちらの世界」に行って、ようやく彼らが本来望んでいた幸せを手に入れられた気がして。
このように、パロディとかグロとかゲロとか他人の悪口ばっかりな作品のくせして、語っていることは真面目だし最後は泣けるという、反則的な映画した。
と思ったらエンドロールですよ。完全にやられた。これはライアン・レイノルズの映画だったんですね。とりあえず、ライアン・レイノルズの不遇のキャリアは押さえとくと良いと思います。
デッドプールつながりで、アメコミの記事です。こちらもデッドプールらしいメタの極致な作品でした。
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