暇人の感想日記

映画、アニメ、本などの感想をつらつらと書くブログです。更新は不定期です。

規格外ヒーロー・デッドプールの最大の反逆【デッドプール・キルズ・マーベルユニバース】感想

f:id:inosuken:20180603220749j:plain

 

著者:カレン・バン(ライター)、ダリバー・タラジッチ(アーティスト)

翻訳:小池顕久

発行所:ヴィレッジブックス

 

 

・前置きという名の言い訳

 2年前、私は「アメコミヒーロー映画」弱者でした。MCUすら何なのか知らなかったくらいです。そんなアメコミ映画に無関心な私の心の琴線に触れた映画。それが『デッドプール』でした。予告を観て、「なんか面白そうだぞ」と思ったので、生まれて初めて映画館でアメコミ映画を観ました。ちなみに、私にとっては本作は初IMAX作品でもあり、同時に初めて「ライムスター宇多丸のウィークエンドシャッフル(以後タマフル)」に感想メールを投稿した作品でもあります。つまり、本作は私にとって非常に思い出深い作品なのです。

 

 鑑賞して面白かったのは言うまでもありません。面白過ぎたのでBlu-ray買ったくらいです。このように、私はすっかり「デッドプール」の魅力に憑りつかれたわけで、原作の方も少し気になっていました。にもかかわらずここまで手が出なかったのは2つ理由がありました。1つは純粋に値段の問題。日本の漫画を買い慣れている身としては、1冊のページ数がほぼ同じでも値段が何倍もするので、買うのを躊躇していました。2つ目は合うかどうかの不安です。以前パラっと読んでみたときに、日本の漫画との違いに違和感を覚え、少し苦手意識を持ってしまっていました。

 

 しかし、タマフルでの光岡ミツ子さんの解説や、「映画秘宝」に載っているイラストを見ていくうちに徐々に心境が変化。そこへ今回の(アメコミの中では)リーズナブルな作品が出たし、デッドプールだしマーベルヒーローも結構出るみたいだからと、思い切って買ってみた次第です。

 

 

・本文

 『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー(以下IW)』公開時、デッドプール公式ツイッターは、こんなハッシュタグを付けてツイートしていました。「#俺ちゃん以外ガチ全滅」。見つけた当初はデッドプールらしい『IW』の公開に便乗した弄りだと思っていました。ですが、まさか『IW』公開より6年も前に、コミックでこれを実現していたとは思いませんでした。しかもデッドプール自ら。作品紹介にも載っていますが、本書は不死身の肉体を持つデッドプールが、「ある理由」からマーベル・ヒーロー(アイアンマン、キャプテン・アメリカ、ソー、ハルク、スパイダーマンX-MEN、etc,etc...)をターミネーターよろしく追いかけ、殺して殺して殺しまくるというファンからしたら『IW』以上の絶望感に襲われるトラウマ・コミックなのです。

 

 では、私は読んでどう思ったのかというと、めっちゃ面白かった。デッドプールは本当にマーベルヒーローのほとんどと戦うわけですが、ページ数が99Pしかないので、1バトルにつき2,3Pだからテンポがめちゃくちゃ良く、サクサク読めます。各々のヒーローの殺し方もバラエティに富んでいて、デッドプールお得意の銃殺、斬殺はもちろん、爆殺や自らの不死性を活かしたごり押し戦法等々、読者を飽きさせません。

 

 何故、デッドプールはこのようなイカれた行動にでたのか。こういう場合、「復讐」というのが定番な気がしますが、今回は「ヒーローの解放」が目的です。「解放?殺しておいて?死んで心を解放しようとかそんなものか?」なんて考えてしまいます。が、そこはさすがはデッドプール。ココで言う「解放」とは、「会社や原作者の都合からの解放」という、メタ視点の極致みたいな意味です。日本の漫画でも、キャラが人気が出たから出番を増やそうとか、テコ入れのためにキャラを増やしたり死なせたり、かと思ったらやっぱり生きてたり、人気があるから引き延ばしが起こったりと、漫画の中のキャラは作者、そして出版社の都合に振り回されます。それはアメコミでも例外ではないようで、あっちでは時間軸の変更とかもやってるみたいですね。本書のデッドプールの行動は、そんな原作者や出版社の身勝手な都合からのヒーローの解放なのです。故に、彼の魔の手は常識外れすぎる人物にまで伸びます。ちょっと待って、俺、これが初めてのアメコミなんだよね。待ってくれよデップー。

 

 本書を読んで実感したのは、デッドプールというヒーローは、本当に「何でもあり」な規格外な存在なんだということ。上記のように内容(というか動機)はぶっ飛んでいますが、それを許容できるのは彼という存在があってこそだと思います。彼は、本当に何物にも縛られない唯一無二の存在だと強く実感できるコミックでした。そういう意味で、彼の魅力を堪能できる作品です。解説書も参考になります。

 

 

デッドプール・キルズ・マーベルユニバース 【限定生産・新装版】 (MARVEL)

デッドプール・キルズ・マーベルユニバース 【限定生産・新装版】 (MARVEL)