暇人の感想日記

映画、アニメ、本などの感想をつらつらと書くブログです。更新は不定期です。

「忘れない」ことで、人は生き続ける【リメンバー・ミー】感想

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80点

 

 国民的漫画『ONE PIECE』。この作品には、今なお語り継がれている名台詞があります。16巻に掲載されているDr.ヒルルクの最期の言葉です。

 

 「人はいつ死ぬと思う?心臓を銃で胸を撃ち抜かれた時・・・違う。不治の病に侵された時・・・違う。猛毒キノコのスープを飲んだ時・・・違う!!!」

 

 「人に忘れられたときさ」

 

 私が本作を観て最初に思い出したのが上記の台詞でした。これを読んだときは小学校低学年だったと思うのですが、それから10年以上経った今、ほぼ同じ内容の映画を観て号泣させられるとは思いませんでした。しかもそれを作ったのがあのピクサー。もちろん『ONE PIECE』に影響されたわけではなく、題材としたのはメキシコにある実在の風習「死者の日」。これは日本でいう「お盆」に非常に近いもので、こんなものを題材にして一級のエンターテイメント作品にしてしまうピクサーの実力には脱帽です。

 アニメーションのクオリティはもはや言及不要の素晴らしさ。もはや実写と見間違えても無理はないレベルまで達していると思います。特に本作で目を見張ったのが、英題にもなっているココさんです。皺とかリアルすぎて本物としか思えません。他にも背景とか素晴らしいですね。

 しかし、本作で最も素晴らしかったのが「死者の国」です。こう聞くと、我々はどこか悲しげな国を想像しがちですが、本作はその正反対。カラフルで陽気な国です。しかもそこには苦しみはありません。皆幸せに暮らしています。本作は、もうこの発想だけでもフィクションとして「勝ち」だと思います。

 また、その設定にも唸らされます。写真が無ければ生者の国と行き来できないとか、我々が普段していることを作品の中にスッと落とし込んでいます。しかもそれがテーマとも直結してるのですね。

 そしてやはりピクサーですから、シナリオも安定の完成度。最初に提示された要素が、後でパズルのピースが埋まっていくように進んでいくストーリーはさすがです。ミスリードもとても上手かったし(私は中盤まで完全に騙されました)、中盤でミゲルの正体がバレるくだりもきちんとした理屈があったりして、こういう点では隙が無い。

 こうして進むストーリーは、最後に普遍的なメッセージへと辿り着きます。それは我々は誰かから生まれ、そしてその誰かはまた誰かから生まれる。こういう積み重ねが確かにあったということです。そして、だからこそ、私たちは今ここに存在しているのです。そして、たとえ死んでも誰かが自分のことを覚えてくれれば、その人の中に永遠に生き続けられるのです。しかし、よほどの有名人でもない限り大抵の人はすぐ忘れるでしょう。だからこそ、家族が大切なのです。

 エンドロールも素晴らしかったですね。終わった後に出てくるアレです。アレにより、本作はより普遍性のある作品となったと思います。今の我々が生きているのは、先人が積み上げてきたものがあるからですよね(負債もありますけど)。こう考えると、ピクサーなんて、まさにそうですよね。技術を継承し、ブラッシュ・アップを重ねて今の地位にいるわけですから。

 しかし、気になったことがあったのも確か。まず、終わってみれば、ストーリーが完全に「ラストありき」になっていた気がします。これまでのストーリーも全てラストの「ため」で、それに従ってキャラを動かしていた気がしたのです。そしてそのせいか、中盤以降、どうにも展開が読めてしまった気がします(まぁそれでも面白いんですけど)。

 後、ココさんについて。何というか、証拠全部持ってたのね。これが分かったとき、どうにも遠まわり感が出てしまったというか。何というか。まぁ、ココに思い出させることが目的ですから、これは良いのかな。後は家族ですね。最初はイライラしてました。ダンテにも。最初足引っ張ってばっかだったし、覚醒してからも大して役に立ってない気がする。

 このように、言いたいことはあります。ですが、やっぱり面白いし、日本でも十分通じるテーマなので、観てよかったなぁと思います。