暇人の感想日記

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観ると腹が減る、犯罪的飯テロ映画【シェフ 三ツ星フードトラック始めました】感想

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80点

 

 この世界には、「飯テロ」という言葉があります。主に深夜など、「飯を食べてはいけない」時間帯に発生し、我々の食欲を刺激するという犯罪に等しい行為です。中でも代表的なのはTVドラマ『孤独のグルメ』シリーズ。出てくる料理、そしてそれを食べる井之頭五郎の表情、全てが食欲を刺激します。まさに飯テロ。そしてこの定義から考えると、本作は「飯テロ」映画と言えると思います。出てくる料理全てが美味そうなのです。監督・主演のジョン・ファブローはこのために実際にプロの料理人に料理を習い、技を取得したそうです(EDに少しその様子が映っていましたね)。その成果が見事に出ています。しかし、本作はそれだけではなく、1度どん底に落ちた男がまた這い上がるという誰が観ても楽しめる娯楽作となっていました。

 本作を観て誰もが連想するのは監督・主演のジョン・ファブロー自身のキャリアです。彼はMCU第1作『アイアンマン』を監督し、批評的にも、興行的にも大成功を納めます。そしてその後も大作に関わることになるのですが、そのどれもが成功とは程遠い結果に終わり、批評家からボロカスに叩かれたそうです。確かに、『アイアンマン2』は微妙な出来でしたが、本作を観ると、何とな~く事情を察することができます。ずっと上の方から指示出されてたのね。つまり本作は、ファブロー自身の伝記映画と言えるのです。だから主演もやっているのですね。彼自身の話だから。

 また、本作はロードムービーでもあります。フードトラックでアメリカを横断するのですが、そこで立ち寄った地域の料理を取り入れていくのです。つまり、地域を回れば回るほどレパートリーが増えていくのです。一種の「アメリカグルメの旅」な感じで、アメリカの料理の豊富さを堪能できます。

 さらにこれに加え、本作は主人公が周囲を見つめなおし、欠けていたものを手に入れていく話でもあります。その最たる人物が息子。彼はよく言えば仕事人間で、家庭を顧みない男で、離婚してますし、息子との接し方も分かりません。しかし、この旅で、「料理人」の関係を通して、息子との関係を修復していくのです。しかも、息子がSNSを担当し、店の売り上げに貢献するなど、こういった織り込み方も上手いなぁと。

 本作は息子視点で見ることもできます。そう観ると、彼にとってはひと夏の思い出であり、だからこそ、最後の動画で泣けてきます。

 そうして、本作はこれらの王道要素を『アイアンマン』で見せたあのカラッとした作風で仕上げています。とにかく主人公が前向きで、周囲の人間も彼に協力してくれて、割とトントンと話が進んでいきます。この「まぁ人生、何とかなるっしょ!」な感じは見習いたいもんです。

 このように、本作は上述の王道要素をカラッとした作風で仕上げた、作中登場する料理のように大変旨い作品でした。