暇人の感想日記

映画、アニメ、本などの感想をつらつらと書くブログです。更新は不定期です。

【密偵】感想:祖国か、服従か

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80点

 

 大日本帝国占領下時代の韓国を舞台にしたスパイ映画。こういう舞台でこのジャンルだと必然的に抗日的な内容になりそうなものですが、本作は祖国と統治国の間で揺れ動く主人公の心情に焦点を当てることで、むしろ民族主義的な内容になっていると思いました。ですが、こちらもそれほど露骨でもなく、結果的には図式としては抗日映画ですが、内容的には骨太なエンターテイメント作となっていました。

 本作は「親日派」であり、生きるために犬になった男・ジョンチュルが、祖国を取り戻そうとするキムらと関わることで感化され、最終的には祖国のために立ち上がる話です。

 「お前はどちらの国に名を遺す」の言葉にある通り、ジョンチュルはこの当時の朝鮮人を代表していたのかもしれません。劇中のように創氏改名で名を日本名に改め、日本に服従している親日派もいれば、義烈団のように祖国を奪回しようとしている人もいる。この2国の相克の中にいたのかもしれません。

 こう書くと単なる抗日映画のようですが、本作の抗日的要素は、全て話を盛り上げるのための要素にしか過ぎないと思います。そして、描き方も中々フラットだと思いました。そのフラットさを支えている要素の1つのが鶴見辰吾さんだと思います。彼が事実上の「悪役」を演じたことで、東という人物が記号的な悪ではなく、もっと奥行きを持った人物に感じました。まぁ、それ故に凶悪さも増しましたが。キムは東と対照的に結構良い奴に描かれていたのは仕方ないですね。

 また、さすがはキム・ジウン。アクション・シーンはやっぱりすごい。冒頭もそうですが、突発的に起こる銃撃戦とかも見ものでしたね。