暇人の感想日記

映画、アニメ、本などの感想をつらつらと書くブログです。更新は不定期です。

【バリー・シール アメリカをはめた男】感想:※アメリカにはめられた男の話です。

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65点

 

 民間の航空会社でパイロットとして働くバリー・シール(以下、バリー)。彼は日々の業務をこなしつつ、キューバ製の葉巻をアメリカに密輸し、小遣い稼ぎをしていた。そしてそれに付け込まれ、CIAの極秘密輸作戦に参加させられる。そしてその過程で出会った麻薬王パブロとも組み、麻薬の密輸にも手を出していく。こうして数十億もの大金を稼げるようになったバリーだが、徐々に歯車がかみ合わなくなっていく・・・。って話

 この話の筋や、一人称かつハイテンポで進む語り口、金がありすぎて使い道に困ったりするなど、全体的にコメディチックで、どことなく2014年のマーティン・スコセッシ監督作「ウルフ・オブ・ウォールストリート」を彷彿とさせる内容でした。ただ、あれほど狂ってはおらず、おとなしめのトーンで進みます。また、サブタイトルから、アメリカを手玉に取った男の話かと思われるかもしれませんが、実際は違います。今作は、男が国を手玉に取るのではなく、国が男を都合のいいように使う話でした。今作は、「アメリカにはめられた男」の話です。つまりこの映画、外面は「ウルフ・オブ・ウォールストリート」ですが、内面はかなり真面目なアメリカ批判映画だったのです。これでまともな感じにはなっていますが、同時にどこか薄味な感じがしてしまったのも事実でした。

 映画はバリー・シールの回想という形で進みます。彼は死の直前にビデオメッセージを残しており、その彼の語りで過去を遡っていくわけです。なので、本作では頻繁にカメラ目線になります。そしてそれが余計にバリーがこちらへ語りかけている感じにさせます。そして本作では80年代を表現するために、当時の大統領の映像を流したり、意図的に画像を荒くしたりしています。

 話の内容はめちゃくちゃですが、実は結構手堅く作ってある作品です。バリーの行き当たりばったりに飲まれてしまいますが、実は画面上とか、会話の中に伏線とかがあったりします。例えば、バリーたちが田舎町に引っ越した時に見える街並み。これがバリーが金を落としたことでどう変化していったかが分かるとか、車の爆殺を前に見せておくことで後のバリーの恐怖につなげたり、「信頼できる男」の台詞も、何度も使われているのですが、最後の奥さんの台詞によってバリーの空元気な感じとかが伝わってきます。話の筋は悪くないのです。

 ラストも後味は悪いものの、物語としてしっかりとまとまっていて、どこか虚しさを感じるものになっています。個人の人権の自由を謳うアメリカが個人を利用し尽くす。バリーの自業自得なところも無くはないですが、国家の身勝手さを感じた作品でした。