暇人の感想日記

映画、アニメ、本などの感想をつらつらと書くブログです。更新は不定期です。

日々が愛おしくなる映画【パターソン】感想

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95点

 

 ニュージャージー州パターソンに住む男・その名もパターソンの一週間を淡々と綴った作品。ジェム・ジャームッシュは初です。ちょうどいい具合に時間ができたので、「50年後のボクたちは」と合わせて鑑賞しました。

 感想としては、めちゃくちゃ羨ましかったです。私もこんな生活したい。

 朝、6時に目を覚まし、朝食をとって会社へ。日々の業務をこなし、夕方には帰宅する。帰ると奥さんが待っていて、2人で夕飯を食べる。そして犬の散歩中に行きつけのバーに寄り、ビールを一杯飲み、マスターや他の常連と話をする。ひとしきり話をしたら帰宅し、妻と共に就寝。合間合間に詩を詠む。翌日。また新しい1日が始まる。

 今作は基本的にこれを繰り返すだけです。劇的なことは何1つ起こりません。動きがあると言っても、中盤でバスが故障するとかそのくらいです。でも、その1つ1つが非常に丁寧に描写されています。しかも日常の些細な変化が画面の中にさりげなく表れていて、観ているだけで登場人物たちの日常が積み重なっていってるのが分かって、余計に日常の愛おしさを感じます。

 とまぁ、ここまでだと普通の映画ですが、本作の特徴的なところは、詩です。劇中、至る所でパターソンは詩を詠みます。詩は、日常の中で感じたことをリズムを持つ文章にしたもの。パターソンが詠む詩によって、彼が過ごしている日常が何倍にも素晴らしいものに感じられます。また、このパターソンを演じるアダム・ドライバーが上手い。バスの運転手なのですが、乗客の会話や、街の風景をちゃんと観察している様子がちょっとした芝居で分かるし、奥さんと会話をしているときの表情もいいですね。とにかく、彼の演技力無くしてこの映画は成り立たないのではないかと思わせられます。ごめんね、ダース・ベイダーもどきの厨二の俳優とか思ってて。

 淡々と進む日常ですが、終盤にある出来事が起こってしまいます。それにより、パターソンは凹んでしまうわけですが、そこで出てくるのが永瀬正敏。彼との交流により、パターソンはもう一度世界を肯定的に捉え、詩を詠み始めます。

 日常というものを詩を描く主人公を中心に描き、彼が詠む詩によって、変わり映えしない日々がとても愛おしいものに思えてくる。この映画そのものが詩のようでした。