暇人の感想日記

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2017夏アニメ⑥【THE REFLECTION-ザ・リフレクション-】感想

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 アメコミ界のレジェンド・スタン・リーと、「蟲師」「惡の華」で知られる長濱博史が共同原作で制作したアニメ作品。長濱さんは大のアメコミファンですし、実力も確かです。私も彼の新作は基本観ることにしています。そして、スタン・リーは説明不要の存在です。その組み合わせでアニメを作る。これを楽しみにしない理由はありません。

 本作の中で一番特徴的なのは、何といっても絵です。他のアニメとは違い、アメコミそのものの絵です。しかも、第1話でアイガイが戦ってるシーンでは、アメコミのような「POW」とか「ZAP」のような漫符も使われています。これで、本当にアメコミが動いているように見えるんですね。感嘆しました。1話ではこのアメコミ全開の世界に視聴者をいきなり放り込みます。私は何が起こっているのかさっぱりでしたね。ですが、それが2話で分かってきて、そして回を重ねるごとにこのアニメ全体の構造が分かるようになってきます。本編で提示されてきた謎とか伏線が、最後で一気にテーマに昇華されているなと思いました。

 本作には、能力者がいます。彼らは、3年前の災害で浴びたものによって大きく2種類に分類されています。光を浴びた者は「ブライスター」煙を浴びた者は「ダークネス」と呼称されています。彼らは基本的に「異分子」として恐怖され、差別されています。ストーリーの大筋は「ブライスター」である主人公一行が、「ダークネス」の陰謀を阻止しようとするもの。その中で能力者のバトルがあるわけです。

 主要人物3人もそれぞれ役割がはっきりしていて、「ヒーローである者」エクスオン、「ヒーローになろうとする者」イアン、そして2人の狂言回しとして、エレノアという感じ、なのかな。特にイアンは良かった。最初はスター気分でヒーローやってたのが、どんどん戦う理由を見つけていって。

 しかし、このアニメはただの能力バトルものではないです。能力を通して、人間ドラマを描いているのです。

 それは彼らの持つ能力に表れています。主人公・エクスオンの能力(後にリフレクティッドではないと言いますが)は、「コピー」です。自分では何の能力も持ちません。彼のXは匿名で使われたりしますし、外見もペプシマン(この場合スパイダーマンかな)で、特徴がありません。そしてヒロインのエレノアは「逃げる」能力ですし、イアンは自身の自慢の歌声が武器になってしまっています。リサは「別の場所に行きたい」という気持ちから能力を発現させますし、マイケルは自身の罪ともとれる能力で、ヴィーレは心を閉ざした彼女そのもののようです。

 このように、全員が自身の葛藤や希望、弱さを能力へと昇華させているのです。ここは非常にアメコミ的だと思っています。日本ではサイボーグ009的ですらあります。スタン・リーは放送前の特番で「完全無欠なヒーローより、人間臭い奴の方がヒーローたりうる」みたいなことを言っていました。ここが完璧に反映されていると思います。

 そして、本作の重要な要素として、「光と闇」があります。それはもちろん「ブライスター」と「ダークネス」のことです。でも、もう1つの意味があって、それが「自身の闇との戦い」なのですね。そしてその闇が、自身の葛藤とか、苦悩だったりするわけです。そしてそれが「能力」という形で表れている。そしてそれが具現化したのレイスで、最後はこの光VS闇の構図がそのまま展開されます。

 しかしこの葛藤とか弱さは世間ではあまり受け入れられるものではなくて、でもどうしようもないから上手く折り合いをつけている。これ、実社会でも同じではないでしょうか。我々には他者から見れば受け入れがたい葛藤とか弱さは誰でも持っています。今作はそれを「アメコミ的な」能力に置き換えただけなのかもしれません。だから、今作で描かれているのは、自身の「闇」と戦う人間賛歌なのだと思います。

 そしてこの視点はヴィラン側にも言えると思います。今作はキャラの描き方がフラットだと感じました。ヴィランもレイスに希望を抱いているから悪事に手を染めています。方法が違うだけで、「自分たちに住みやすい世界にしたい」という大義は理解できます。

 このように、本作は能力そのものを人間賛歌へと昇華させたという点で、非常にアメコミ的だなと思います。私が見た限りでは。

 最後に1つ。日本代表のヒーローがプリキュアみたいな魔法少女ってどういうことだ(笑)