暇人の感想日記

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【空飛ぶゆうれい船】感想:本当の幽霊は? ※ネタバレあり

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75点

 

 今から約50年前の東映アニメーション作品。ぶっちゃけ、知名度はないです。今回私が鑑賞したのも、町山智浩さんがよく話をされていたからでした。

 

 完全に舐めて観たのですが、今観ても十分通じる内容の作品でした。観る年齢によっては、世界観が変わってしまうのではないでしょうか。

 

 確かに、脚本に難があることは否めません。所々首を傾げる展開がありましたし、少し急すぎる展開もあります。しかし、それは細かいところで、全体的な構成はとても良くできているんですね。というのも、どんでん返しが何回も起こるのです。そして、中盤には最初とは映画の中の世界観が180度変わっています。

 

 最初は「ゆうれい船」というタイトル通り、ホラーで始まります。このオープニングクレジットから凄い。ゆうれい船を船が軋むような音をBGMにしながら映し出していくものです。怖すぎです。他にも、日常の中に突然異物が入り込むことによる恐怖が非常によく出てるんですね。戦車とゴーレムの登場シーンは白眉だと思います。攻撃までの間が何とも言えん。このシーンのように、今観ても息を呑むシーンが多々あります。ちなみに、宮崎駿氏はこのシーンの原画を担当しています。モブシーンはやっぱすげぇ。さらに後年、「さらば愛しきルパンよ」でこの映画をリメイクしています。全体的なプロットは本当にそっくりです。

 

 そして主人公・隼人とその父がある大企業の社長を助けたところからこの映画は始まります。

 

 数日後、街にゴーレムが襲来。ゆうれい船が仕向けたもので、国防省が撃退に乗り出します。その騒動で、隼人は父親を亡くします。そしてその時、彼は、今まで育ててくれた人が、実の父親ではなかったと知るのです。ここから、隼人にとっての世界がどんどん壊れていきます。

 

 彼はひょんな偶然から、驚愕の真実を知ります。それは、あのゴーレムは国防省と依然助けた社長・黒潮が結託して作ったものだということです。彼らは、街を襲わせることで、世界にゴーレムの性能を示し、売り捌こうと考えていたのです。そして、そのさらに裏には「ボア」という存在がいることも明らかになります。

 

 恐ろしいのは、黒幕たちはこれを悟られないために、マスコミを利用していることです。「ボアジュース」なるものを売り捌き、国民から力を吸い取り、ボアのものにしてたのです。巷の蒸発事件は、彼らの仕業だったのです。

 

 この真実を知った隼人は、真実を訴えますが、もちろん誰も信じてくれません。これまでの彼にとっての「現実」は完全に破壊されました。そこで味方になってくれるのは誰か?ゆうれい船です。彼らはボアの企みを防いでいたのです。

 

 ここから話は一気にSFになっていきます。ゆうれい船なんてもうヤマトにしか見えません(しかも、艦長役は沖田十三を演じた納谷五郎氏ですし、特攻しようとするシーンもあります)。

 

 ラストも素晴らしかったです。全てを破壊された隼人ですが、前を向いてしっかりと羽ばたいていく様子は、BGNも相まって、見ていて希望を感じます。

 

 本作は石ノ森章太郎さんが関わっていることもあり、どことなく、「サイボーグ009」を彷彿とさせるところもあります。今作の敵は世界に武器を売り捌こうとしていて、人間の他に黒幕が別にいるのです。これ、完全に009のブラック・ゴーストじゃないですか。思えば、ブラック・ゴーストは「黒い幽霊」ですし。「ボア」の正体が脳みそとかだったら完璧でしたね。

 

 タイトルは「空飛ぶゆうれい船」です。ゆうれい船はもちろんあれです。ですが、「幽霊」は誰だったのでしょう。ブラック・ゴーストは陰で世界を戦争に陥れようとしていました。今作でも、ボアは世界を戦争に陥れようとしています。ボアのような奴こそ、真の「幽霊」なのかもしれんなぁと無い知恵絞って考えてみました。