暇人の感想日記

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【スイス・アーミー・マン】感想:一家に一体は欲しいハイスペック死体との友情

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65点

 

 映画の冒頭、無人島に漂着した男が首を吊ろうとしている。しかし、恐ろしくてできない。グズグズ迷っていると、ふと海岸に1人の男が横たわっているのを発見する。残念ながらその男は死んでいたが、何か音がしている。よく観察してみると、それはオナラだった。不思議がって観察していると、死体は男を乗せ、一気にオナラを吹き出し、海を疾走し始めたのである・・・という、書いていて頭がおかしいんじゃないかと思われる展開でこの映画は始まります。映画は全編にわたってこんな感じで、とても変な映画でした。

 この映画の登場人物は2人です。ポール・ダノ演じるハンクと、ダニエル・ラドクリフ演じるハリー・ポッター・・・ではなく、メニーです。ハンクは一般的な男ですが、死体であるメニーがすごい。前述のオナラ・ロケット(勝手に命名)に加え、歯で何でも切れるし、髭も剃れる。体の中に水を溜め込み、水筒代わりになるし、出し方によってはシャワーにも使える。さらには死後硬直しているからか、反動をつけることで丸太くらいなら普通に壊せるし、指パッチンで火も起こせるし、終いにはアソコがコンパス代わりになるなど、まさに一家に一体は欲しいハイスペック死体です。会話の相手もできるので、独身の方にもおすすめ。欠点は持ち運びしにくいってことだけ。本作はこの死体を使ったサバイバル・・・ではなく、2人?の友情の話です。

 ハンクとメニーは下ネタを言いながら、だんだん交流を深めていきます。そしてメニーはそれに合わせるかのように、「人間味」を身につけています。この過程がかなり丁寧に描かれていて、観ていて死体相手なのに、微笑ましく観ていました。友人に影響を受けるって、よくあることですからね。

 最終的にかなり人間に近づくメニーですが、社会に降りてきて、小さい女の子に「気持ち悪い」と言われてしまい、ハンクがスマホの待ち受けにしている憧れの女性には、不審者扱いをされてしまいます。そうして、「自分が変である」ことを悟ったメニーは動かなくなります。ここから全てが変わっていきます。メニーが死体に戻ったことで、ハンクは完全に狂人扱い。2人の生活を一部始終観ていた我々ですら、それがハンクの妄想ではなかったのではかと疑ってしまいます。ですが、そこでオナラですよ。1人でやれば変人だが、2人なら変人じゃない。友達。まさか、最後にオナラに泣かされるとは思ってませんでした。あの時のメニーも、ハンクも、「幸せの印」である「笑顔」を浮かべていました。

 「友達がバカやったら、俺も付き合う。それが友達ってもんだろ」という言葉があった気がします。無かったらすいません。本作はそんなノリです。例え変人であっても、2人でやればいい。会話の下ネタ具合から、「中学生か!」と言いたくなるような、素晴らしい友情の話でした。