pixivで話題になり、遂には50万人が読んだといわれる作品の書籍化。私はこの手の漫画は読まず、本作も完全ノーマークだったのですが、「映画秘宝」で紹介されていて、俄然興味が湧き、購入してしまいました。
とても面白かったです。絵は今風の萌えキャラなのですが、1人1人の映画に対する愛が半端ではないのです。また、嬉しいことに、キャラごとに「好きな映画」が紹介されているので、それを見れば、そのキャラの性格が一発で分かるという親切設計。
ポンポさんは見た目こそ萌えキャラですが、言動は萌えキャラとはかけ離れたもの。主人公を目が腐ってると言い、ヒロインを勘で採用、祖父のコネを使い大物を引っ張て来たり、やりたい放題。しかも考えていることは映画のことだけ。「好きな映画」から察せられるように、完全に狂気の人です。
しかし、ポンポさんをはじめとしたヒロインはまだかわいいのですが、問題は主人公です。「フランケンウィニー」のヴィクター少年を思わせる容姿で、好きな映画を見ると、「あー色々溜め込んでるのね」と思わずにいられない人物で、大変好感がわきますね。本筋は彼の映画監督としてのサクセスストーリーなのですが、映画を撮っているときの彼の目は、希望に満ち溢れたものではなく、完全にイッちゃってる目です。しかも、「会社の利益とかどーでもいい。超楽しい!」とか言いながら仕事してるんですよ。彼も立派な狂人です。
つまりこの映画、出てくるキャラがことごとく変人、もしくは映画に憑りつかれた狂気の人なのです。私はそこが面白いと思いました。世にいう偉大な監督に限らず、何か1つのことを極めた人は、どこかおかしな人が大変多いです。今だと宮崎駿とか、高畑勲が該当すると思います。しかし、そんな人だからこそ、常識に囚われず、傑作を生みだせたのだと思います。名監督ほど狂気に憑りつかれた人である。この点を描いたからこそ、本作はここまで支持されたのだと思います。