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2020年夏アニメ感想①【GREAT PRETENDER】 ※ネタバレあり
【Case4を見て】
言葉通り「ジム・ジャームッシュが作ったゾンビ映画」【デッド・ドント・ダイ】感想
86点
『パターソン』を監督したジム・ジャームッシュ。彼の次作は、何とゾンビ映画。日常をオフビートな笑いを交えて描いてきた彼がゾンビ映画を撮ると聞いたときはビックリしたのですけど、「ジム・ジャームッシュが作るゾンビ映画」は大変興味があったので鑑賞した次第です。
鑑賞してみた結果、本作は紛れもない「ジム・ジャームッシュ映画」でした。「ゾンビ映画」というジャンルに対するリスペクトはあれど、基本的にはジャンル映画のフォーマットと借りてジム・ジャームッシュが遊び倒した作品。それが本作です。
まず、本作の基本的なストーリーを追ってみると、立派な「ゾンビ映画」です。とある村でパニックが広がり、住民全員がゾンビになってしまう。そしてオタクは「ゾンビ映画の定番だ!」とテンションを上げて立て籠もり、警官らは事態を傍観するしかなく、ゾンビを倒しつつ街を回る。そしてラストにはジム・ジャームッシュ監督からの、本当に取ってつけたような「メッセージ」が「観測者」によって語られます。このメッセージも、現代の資本主義への警鐘をしている(ように)見えます。そして本家の『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』にも似た感じのテーマはあったと思います。
ただ、本作は、とにかく「ゆるい」そして、「適当」で、いい加減なのです。都会から来た都会っ子たちは村に来るまで尺を取った割に即効でゾンビに殺されるし、立て籠もったオタクと黒人はあっさりと殺され、差別主義者の白人も差別発言に決着をつける素振りもなく殺されます。そして救世主っぽい感じを出していたティルダ・スウィントンは何をするでもなく、ゾンビを何人か斬り殺した後に何故かUFOで脱出します。彼らから分かる通り、本作は序盤で張られた伏線を全く回収することなく、映画が終わるのです。
しかも本作は、とにかく「ゆるい」映画です。冒頭、「THE DEAD DON’T DIE」がかかったときのビル・マーレイとアダム・ドライバーの会話とか、終盤の2人の会話とかもそうですし、最初の犠牲者が発見されたときの3人の繰り返しのギャグもそう。とにかく全編に亘って弛緩した空気が漂っているのです。この点からは、ジム・ジャームッシュがとにかく遊んで撮っているんだなというのが伝わってきますし、彼のこれまでの作品の雰囲気です。
適当だしゆるい作品ですけど、実はジャームッシュなりの世界観が出ています。それはパンフレットでも語られている通り、「世の中の人間は皆ゾンビだよ」ってこと。彼はスマホを見ながら徘徊している人間を見て、「ゾンビみたいだな」と思い、そこから本作のアイディアが生まれたそうです。そして彼はこの世の中と大人には期待してなくて、「悪い結末にしかならない」と思っているのです。そしてそんな世界からは「脱出」するしかないのです。UFOに連れ去られるとか。しかし、彼はどうやら子供には期待しているらしくて、ラストで孤児院から「脱出」させています(彼ら彼女らがどうなったかも描かない。ここも適当)。後は最初から世界に属していない世捨て人くらいですね。この世界で正常なのは。そういう映画なんだと思います。そしてこれは、「ゾンビ映画」っぽく、ジャームッシュ作品でもあります。つまり本作は、「ジム・ジャームッシュが作ったゾンビ映画」として見ると、確かに面白いと思います。
ジャームッシュ映画。
和製ゾンビ映画。
ハリウッド映画数本分の濃さがある特盛映画【サーホー】感想
94点
『バーフバリ』2部作で国際的なブレイクを果たしたプラバース。彼の主演最新作です。私は『バーフバリ』は大変楽しく観たのですが、別にプラバースのファンになったわけではありませんでした。それでも何故本作を観たのかと言うと、予告が面白かったから。荒唐無稽なアクションが連続して続き、外連味しかない演出、そしてプラバースのカリスマ的なカッコよさを目の当たりにし、近年のインド映画の出来から、「これは愉快な映画に違いない!」と思い、鑑賞した次第です。ちなみに、緊急事態宣言解除後、初めての映画です。
鑑賞してみると、事前の予想の遥か上をいく荒唐無稽な、しかし圧倒的な熱量と破壊力で我々の度肝を抜く痛快娯楽エンタメ作品でした。
本作を観て圧倒されるのは、何と言ってもアクションです。本作のアクションは普通のアクション映画のスケールを遥かに超えています。序盤こそ普通のアクションにテルグ語映画得意のスローモーションという外連味が乗った感じでした。しかし、ストーリーが進むにつれてアクションが多様になっていきます。というか、ハリウッド超大作のアクションを何本分も盛り盛りにしたようなアクションが連続します。具体的には、アクションのスケールはマイケル・ベイで、やっていることは『ミッション・インポッシブル』とか『マッドマックス』、そしてMCU映画を彷彿とさせるスーパーガジェットなんです。そしてこれらがオリジナルと同じくらいの熱量で展開されます。なので、本作を観ると、映画2,3本分を観たかのような満足度を得ることができます。
そしてこれらのようなアクションがただ続くのではなく、荒唐無稽なれど撮影とか美術とかCGとかがしっかりしているせいなのか分かりませんが、バカバカしくないのです。きちんとしたリアリティを以て観ることができます。完全に常軌を逸しているにもかかわらず、面白く、素晴らしいのです。
そして本作のストーリーも荒唐無稽で素晴らしい。2転、3転、というか、ほとんど「嘘も方便でしょ!」とでも言わんばかりの超展開の連続なのです。「サーホー」の意味が分かった瞬間、本作の全てが反転します。ここは本当に衝撃的で、私は危うく、映画館で声を出しそうになりました。それくらいビックリしました。伏線は張っていたとはいえ、生半可な映画ではこの反転は「ご都合主義」と受け取られそうなところ、勢いとノリで押し切っていて、それがまた大変素晴らしい。そして最終的な帰結が結局、「王の帰還」である点も、プラバースでしかできない内容で、少し笑ってしまいましたが、同時に体が震えるほど感動しました。いや本当、あのシーンの高揚感は異常。
以上のように、本作は素晴らしい作品でした。決して練り込まれた脚本ではありません。しかし、大盛りのアクションのつるべ打ちを真剣にやっている作品で、しかも悪い奴らも皆やっつけられる痛快娯楽作でした。娯楽作として素晴らしい作品でした。
『バーフバリ』2部作。
感動路線。
ブログを開設して3年が経ったという話
はじめに
皆様。こんばんは。いーちゃんです。いつも私のブログ、「暇人の感想日記」を読んでくださり、ありがとうございます。おかげさまで、当ブログも開設から3年が経ち、4年目を迎えることができました。昨年の記事を書いた頃は「月にアクセス数3000いければいいなぁ」とボンヤリ考えていたのですが、昨年の夏に金曜ロードショーで『千と千尋の神隠し』とともに放送された『透明人間』の影響で、『ちいさな英雄』の記事にアクセスが集中。それ以降はブログへのアクセス数そのものが上昇し、現在は1日に300~600、月だと15000はいけるようになりました。いや本当、ここまで書き続けてきた成果が身を結んだ感じです。
アクセスの傾向としては、映画の記事よりも、アニメの記事へのアクセスが多くなりました。特に毎クールごとのTVアニメですね。「注目記事」に出ている記事を見てもアニメばかりで、映画の感想も書いているブログであることなど忘れてしまうレベルです。しかし、ここまでこのブログが成長したのも皆様のおかげです。本当にありがとうございます。重ね重ね、御礼申し上げます。
さて、今回の記事では、例によってこの1年で印象的な記事を挙げていきたいと思います。昨年までは特に数の指定はしていなかったのですけど、今回は10前後にします。キリがないので。
『凪待ち』 2019年8月14日
まずは『凪待ち』です。何故この記事なのかと言うと、香取慎吾さん主演だからということもあり、Twitter上でめちゃくちゃバズったのです。そしてそのおかげでアクセス数が上がりました。改めて彼の人気の高さを思い知りました。
『ジョーカー』 2019年10月13日
2本目は『ジョーカー』。私にとっては素晴らしい映画でした。社会の最下層に生きる男が、その鬱憤を爆発させるという大問題作。映画そのもののクオリティはもちろんですが、アーサーが感じていたことは、私が感じていたことでもあり、そこに自分自身の危うさを感じさせてしまう作品でした。衝撃度でランクイン。
「学ぶことの楽しさ」を思い出させてくれる漫画「ほしとんで」の感想 2019年11月6日
「ほしとんで」の感想記事です。何故この記事なのかといえば、はてなブログのお題に参加し、それが週刊はてなブログで取り上げられたのです。かなりビックリしましたが、同時に嬉しくもありました。
『羅小黒戦記』 2019年12月7日
中国製アクションアニメ。「NARUTO」を彷彿とさせるカッコいいアクションの連続。昨年の大発見作品で、3週間前にチケットを買って観に行ったのが良い思い出。早くディスク出ないかな。
『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。⑭』 2019年12月14日
「俺ガイル」最終巻の感想記事。これまでずっと付き合ってきた作品をリアルタイムで完結を迎えるのは久しぶりでした。本作はラノベにおける「ラブコメ」を脱構築した作品で、それについての私見を書けたという意味で思い出深い記事。
『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』 2019年12月27日
私の怒りが爆発した記事。今でも『スター・ウォーズ』をイチ「商品」に貶めたディズニーのことは許せない。
『2010年TVアニメ各年のベスト作品&ベスト10』 2020年3月27日
以前からやりたかった、2010年代のTVアニメのランキング記事。2010年代の私のアニメ歴を振り返ることも出来、書いている間は楽しかったです。こうしてランキングを作って、簡単な感想を書いてみると、私の好みも浮き上がってきたようです。
『映像研には手を出すな!』 2020年3月29日
今年ベストアニメの筆頭作品。そして私の「監督:湯浅政明」という理想が現実になった作品でもある。内容が素晴らしすぎたので載せます。
『魔術師オーフェンはぐれ旅』 2020年4月18日
「往年の名作リメイク作品」の1つ。この手の作品は、きちんと作ればファンもついてくるのに、ダメな出来になってしまい、新規のファンから「やっぱ古いのはダメだな」と言われてしまうことがままあります。本作もそれです。この手の作品は誰かが「ダメだ」と言わないとファンは悶々とするだろうと思い、「言わなければ」と謎の使命感が芽生え、書き上げた記事。多くのファンの方々から賛同の意見をいただき、SNS上で拡散されました。
『イエスタデイをうたって』 2020年7月18日
最後は最近の記事を。この記事を選んだのは、初めて他の方のブログで引用されたから。自分の記事を肯定的に引用していただけるのはとても嬉しかったのですが、同時に少し気恥ずかしくもありました。
おわりに
はじめにでも書きましたが、当ブログは開設より3年が経ち、これから4年目を迎えます。それも読んでくださっている皆様のおかげです。これからも、当ブログを、何卒よろしくお願いいたします。
洗練されたロマコメ【ハーフ・オブ・イット:面白いのはこれから】感想
89点
NETFLIXオリジナル映画。緊急事態宣言発令時に鑑賞。理由は単純で、「話題になってたから」。監督はアリス・ウー。何とデビュー作『素顔の私を見つめて・・・』から15年振りの監督作のよう。てっきり新人監督だと思ってました。
本作のジャンルはロマンティック・コメディに該当すると思います。ストーリーは非常にオーソドックス。とある女の子に片想いしている子がいて、その子が別のアメフト男子に協力してラブレターを代筆するというもの。ベタですらあります。どうやら大元となった古典的な劇があるそうです。しかし、本作はそれでも素晴らしく面白い作品でした。
まず、本作はオーソドックスなストーリーを基にしつつ、現代的に内容を変化させています。主人公のエリーが片想いしているのは学年のアイドル的存在の美少女アスター、つまりエリーはレズビアンなわけです。昔だったら主人公と代筆を頼む人間は同性だったと思うし、代筆していた側が好きになって三角関係がこじれるとかあると思うのですけど、本作はLGBTQの要素を入れて、その上で古典的な代筆モノをやっているのです。
そして、本作における関係性も「恋人」とか1つに決めつけず、もっと大きな意味合いの関係性として描いていました。それは冒頭の「愛とは自分の片割れを見つけるもの」という考えから、関係性を「愛」という言葉ではなく、名前が付けられない大きな関係性として描いている点が良いなと思いました。また、ポールに良いところが見つかっても、エリーは別に(恋愛的な意味で)好きになるでもなく、ずっと対等な関係として接していたのも現代的だなぁと思います。
さらに、本作は撮影が面白くて、冒頭の「片割れを探す」という台詞からか、前半は左右対称な、シンメトリックな構図が多かった印象です。また、編集も良くて、中盤の3人が教会にいるシーンでの、エリートアスターの視線が合ったと思わせておいて実は違っていたという編集は、エリーが感じている切なさを感じさせる素晴らしいシーンでした。
他にも、本作の中にある膨大な引用、そしてクスッと笑えるコメディセンスなど、全てが行き届いている作品で、非常に品の良い作品だったと思います。
ロマコメ。
大人のマリッジストーリー。